Z世代に人気のeスポーツが体験できる空間を導入する計画もある(写真/近畿大学提供。施設はイメージ)
Z世代に人気のeスポーツが体験できる空間を導入する計画もある(写真/近畿大学提供。施設はイメージ)

夏野:大学教育はどちらかというと、社会と直接的に関係のないことに集中する人生最後の機会という節がありました。ただ、世界を見渡せば、学生起業家や在学中のインターンが当たり前になっています。それが日本では社会と教育に線引きがある。この垣根を低くしていきたい。

久夛良木:均一な教育方式に則っているからか、最近は自らの考えを積極的に表明しないようにしている子どもが増えているように感じています。漢字一つとっても、ちょっと書き順が違うだけで×をつけて終わり。少し変わった数学の解き方をしたり、違うモノの捉え方をすると標準解答と違うからだめだと言われる。すると、先を読める頭のいい子はそれを察して、考えることを放棄してしまいます。

アカデミズムに恩返し

――空気を読んできた子どもたちは、大学の4年間で変わるのだろうか。

夏野:押さえつけられていても、いろんな形で才能を磨いている生徒はたくさんいます。中学や高校時代にはをかぶっていた、潜在的な力を持った子どもたちに大きなチャンスを与えることができます。

近畿大学情報学部では、データ分析やAI(人工知能)活用等、IoTやロボットなどの技術開発者の育成に取り組む(写真/近畿大学提供。施設はイメージ)
近畿大学情報学部では、データ分析やAI(人工知能)活用等、IoTやロボットなどの技術開発者の育成に取り組む(写真/近畿大学提供。施設はイメージ)

久夛良木:僕たちとしては、正しい答えだけでなく学生が自分で考えた過程を大事にしたいし、そのプロセスを知りたい。情報学部には、私と夏野さんも含めて実社会で活躍した先生が多くいます。教科書には載っていなかったかもしれない課題を見つけて、一緒に解決策を探したいんです。

夏野:僕自身、アメリカの大学院で学んだことをきっかけにインターネットの世界に飛び込みました。もしビジネスで成功できたら、いつかアカデミズムの世界に恩返ししたい思いもあります。

――近畿大学は大学入試の志願者数で8年連続首位を独走。学生数は3万人超と国内でも有数の規模を誇る。

夏野:すごく特別な環境だと思っています。文芸学部から医学部まで、あらゆる学部を持っていて、かつ新しいことに取り組んでいる。日本の大学の序列は偏差値や入学試験の難易度で決まっていましたが、それが世界標準でないと明らかになった今、序列に影響されない大学になり、情報学部がその起爆剤になることを期待しています。

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若い人の脳は「スポンジ」のように…