2015年リリースのiOS8.3では、人物の絵文字に5種類のスキントーンが導入された(撮影/写真部・戸嶋日菜乃)
2015年リリースのiOS8.3では、人物の絵文字に5種類のスキントーンが導入された(撮影/写真部・戸嶋日菜乃)

 そう明かすのは、ビジネスチャットツール「Slack(スラック)」を提供するスラック ジャパンのシニアプロダクトマーケティングマネージャーの伊藤哲志さんだ。スラックでも、コミュニケーションの円滑化や仕事の効率化を狙い、様々な絵文字が導入されている。世界的にリモートワークが進んだ20年には、パソコンのキーボード上を歩くやソーシャルディスタンス、通信障害などを表すユニークな絵文字を追加した。

 そのスラックが最初に絵文字の人物のスキントーンを6種類から選べるようにアップデートしたのは、15年7月のこと。

「アフリカ系アメリカ人のデザイナーが、映画などでもインクルージョン(多様性の受容)の反映が当たり前になっていないことに違和感を持っていました。スラックとしても、それらが当たり前であってほしいという願いがあります」(伊藤さん)

Slackでは人物のスキントーンを自由に選ぶことができる(撮影/写真部・戸嶋日菜乃)
Slackでは人物のスキントーンを自由に選ぶことができる(撮影/写真部・戸嶋日菜乃)

■人種も性別もなかった

 今の絵文字の“原点”には、日本中を席巻した「iモード」の開発がある。iモードの絵文字生みの親でドワンゴ専務取締役COOの栗田穣崇(しげたか)さん(48)は、当時を振り返る。

「iモードは250字しか送れないサービスだったので、文字量が少ないなかで特色を出したかった。絵文字を入れることで、会話のとげとげしさがなくなったり、コミュニケーションがとりやすくなりました」

 泣き顔や笑い顔、ひらめきを意味する電球など176種類の絵文字をデザイン。12ドット×12ドットの制約の中で、現在からみれば表現できる量が比較にならないほど少ない。しかしテクノロジーの進化に伴い、今では多様性を映し出す鑑にもなった。栗田さんが続ける。

「私が手掛けた顔の表情には、人種も性別もありませんでした。絵に近づけたことで、多様化が進んでいった。今後も世相を取り入れた新しい絵文字はどんどん追加されていくと思います」

(編集部・福井しほ)

※AERA 2021年3月8日号

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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