【Green Card】
<br />苦労の末、1976年に取得したグリーンカード。ベトナム戦争下、平和活動に没頭したジョンを米政府は歓迎しなかったという photo/山中慎太郎 (Qsyum!)
【Green Card】
苦労の末、1976年に取得したグリーンカード。ベトナム戦争下、平和活動に没頭したジョンを米政府は歓迎しなかったという photo/山中慎太郎 (Qsyum!)

■ヨーコの斬新な発想

【彼を失う覚悟はできていたけれど、戻ってきてくれてうれしかった。本当に失うとは思っていなかった】(12年、ヨーコ)

 70年代後半は主夫としての時間が長くなるジョン。米国のグリーンカードを取得し、ヨーコのふるさとである日本への旅行もできるようになった。当時の家族の様子がわかるイラストや写真なども多く展示されている。

 そして、80年12月8日、悲劇の瞬間を迎える。

【ジョンは人類を愛し、人類のために祈っていました。どうか同じように彼のために祈ってください。愛を込めて】(80年、ヨーコ)

「ジョンとヨーコの足跡が発言と珍しい展示でこのように見られると、これまでの断片的な知識がつながり、二人の発言で生き生きと頭の中で整理できる貴重な展示だと思います。二人の関係や、世界への発信の仕方などがうまくまとまっています」(君塚教授)

【White Chess Set】
<br />ヨーコの作品。白い駒だけでできているチェスセット。自分の駒を覚えていないと戦えない。むしろ、戦わない? photo/山中慎太郎 (Qsyum!)
【White Chess Set】
ヨーコの作品。白い駒だけでできているチェスセット。自分の駒を覚えていないと戦えない。むしろ、戦わない? photo/山中慎太郎 (Qsyum!)

 特に気になったのは2点あるという。

「展示の随所に、ヨーコさんの斬新な発想が見えた気がしました。それこそジョンが彼女に惹かれたところでもあるのでしょう。70年代の個人主義の時代を背景に活躍したヨーコさんのフェミニズム的なパワフルなところも、あらためて感じました。また、『失われた週末』ではどのように二人が離れ、また戻ったかが印象的でした。若者にも、そして同時代を生きていた人たちにも、特に見てもらいたい」(同)

 企画展のPRを担当する中村まきさん(57)はこう説明する。

「二人は『愛と平和』や『イマジン』で有名ですが、それだけに収めるにはあまりにもったいない。表現者としての多面的な魅力も感じ取ってほしい」

 企画展は2021年1月11日まで。ジョン・レノン生誕80年を記念したニュー・ベスト・アルバム「ギミ・サム・トゥルース.」も新たなリミックスで10月に発売。プロジェクトには、ショーン・レノンも参加している。また、1971年にリリースされた名盤「イマジン」のイメージ映像作品として制作された、劇場上映版「イマジン」も全国のTOHOシネマズで上映中だ。日本初公開で、未発表映像を含む15分の特典映像が加わった特別バージョンとなっている。

(編集部・小田健司)

※AERA 2020年11月23日号