【Grapefruit】
<br />ヨーコが1967年にジョンに贈ったアートブック「グレープフルーツ」。名曲「イマジン」の歌詞やアイデアに影響を与えた photo/山中慎太郎 (Qsyum!)
【Grapefruit】
ヨーコが1967年にジョンに贈ったアートブック「グレープフルーツ」。名曲「イマジン」の歌詞やアイデアに影響を与えた photo/山中慎太郎 (Qsyum!)

【「グレープフルーツ」は知らず知らずのうちに私自身を癒す本になっていた】(71年、ヨーコ)

 ヨーコは67年、ジョンにアートブック「グレープフルーツ」を贈った。これは、名曲「イマジン」の制作に影響を与えたとされており、2017年には正式にヨーコも共作者となった。「グレープフルーツ」に見入る君塚教授が、こう説明する。

「あらためて展示で見てみるとよくわかります。命令文で始まる示唆的なところや、そうすれば世界が変わっていくよ、というメッセージが、『イマジン』につながっています」

■二人で平和のために

【実は、女性芸術家と出会って恋に落ちるという夢がずっとあったんだ。アート・スクールに通っていた頃からね】(71年、ジョン)

 その二人は69年に結婚する。会場には、仏パリで購入して結婚式当日に着ていた衣装も公開されている。

「当時ヨーコはジョンと結婚したことで魔性の女だとか、ビートルズを解散させたとか、人種差別も加わり散々批判されました。それでも頑として振る舞っていたヨーコさんの強さがわかる。ジョンの白いジャケットとヨーコの白のミニスカートは展示品の目玉の一つですね。頭の中で『ジョンとヨーコのバラード』が流れてきました」(君塚教授)

【Bed-In】
<br />結婚後「ベッド・イン」と呼ばれる平和活動を2度行う。名曲「平和を我等に」は、このギブソンのギターから生まれた photo/山中慎太郎 (Qsyum!)
【Bed-In】
結婚後「ベッド・イン」と呼ばれる平和活動を2度行う。名曲「平和を我等に」は、このギブソンのギターから生まれた photo/山中慎太郎 (Qsyum!)

 ハネムーンのホテルの一室を公開することで、普遍的な愛を世界へ向けて発信した「ベッド・イン」を再現したコーナーもある。ベッドの中から平和を訴える二人のパフォーマンスに世界中が驚いた。

【例えば結婚するにしても、二人で何かするなら平和のためにやろうと決めたんだ。<ベッド・イン>の間に─僕たちは僕たちだからね─】(71年、ジョン)

 カナダ・モントリオールでの2度目の「ベッド・イン」で生まれたのが、ジョンが「プラスティック・オノ・バンド」として発表した曲「平和を我等に」だ。曲作りに使ったギブソンのギターには、二人の似顔絵も描かれている。

 ベトナム戦争のさなか、ヨーコとジョンの関心は平和活動へと傾く。君塚教授が続ける。

「私の中では政治的にはポール・マッカートニーは公民権運動、ジョンはベトナム戦争の印象があります。ジョンは特にヨーコさんの影響でしょう」

 そして、あまりイメージはないかもしれないが、その後、二人には別居の期間があった。後に「失われた週末」と呼ばれる時間だ。ジョンは西海岸ですさんだ生活を送ることになるが、やがて関係は修復される。

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