FOFO(フォフォ)/エミール・イルブードさん(61)/店名のFOFOは西アフリカの言葉で「歓迎」の意味。内陸国・ブルキナファソ出身(撮影/写真部・張溢文)
FOFO(フォフォ)/エミール・イルブードさん(61)/店名のFOFOは西アフリカの言葉で「歓迎」の意味。内陸国・ブルキナファソ出身(撮影/写真部・張溢文)

 コロナ禍で海外旅行が難しくなった。だが、旅の気分は国内でも味わえる。出来たての料理を移動販売するキッチンカーでは、外国人シェフによる本場のハイレベルな料理や珍しい料理に出合える。「その数、約30カ国」と、キッチンカーの事業を手がけるMellow(メロウ)の広報担当は言う。

 キッチンカーは、料理だけでなく店主たちの個性も魅力的だ。

 アフリカ料理のキッチンカー「FOFO(フォフォ)」の店主エミール・イルブードさん(61)は、西アフリカのブルキナファソの出身で、隣国コートジボワールの初代大統領の元専属料理人だ。1996年に来日後は、コートジボワール、ギニア、ブルキナファソの大使館の料理人を務めてきた。

「子どものころ、フランス人シェフが長いコック帽をかぶった写真を見て憧れ、コートジボワールの料理学校に入りました。トップの成績を収め、フランスやモロッコでも料理の勉強をしました」(エミールさん)

アフリカの料理を各種そろえる。トマトシチューやケニアカレーと、ライスあるいはクスクスのセットも人気(撮影/写真部・張溢文)
アフリカの料理を各種そろえる。トマトシチューやケニアカレーと、ライスあるいはクスクスのセットも人気(撮影/写真部・張溢文)

 卒業後、コートジボワールのホテルに勤務。大統領のパーティー料理を手がけたのをきっかけに指名を受け、専属となった。大統領が亡くなったあと、海外で働く複数の選択肢が示されたなか日本を選んだ。

「ヨーロッパやアフリカの国々はよく知っていましたが、アジアは未知でした。当時、ヤマハのオートバイに乗っていて、高品質な製品を作る国として、日本に興味をひかれました」

■売り上げで学校建てる

 キッチンカーでは、大統領も好んで食べたという「ケジェヌ・チキン&サクボ」も提供している。ケジェヌ・チキンはトマト味のチキンシチューで、サクボはとうもろこしの粉を練った伝統的な主食。野菜のうまみが立った優しい味わいで、日本人の口にも合いそうだ。

 ほかにも、西アフリカ版のパエリア「チェブ・ヤップ」や、鶏肉とたまねぎをマスタードでマリネして煮込む「チキン・ヤッサ」、キャッサバ芋の「アチェケ」など、アフリカの料理を各種そろえている。

大統領も好んで食べた「ケジェヌ・チキン&サクボ」800円(撮影/写真部・張溢文)
大統領も好んで食べた「ケジェヌ・チキン&サクボ」800円(撮影/写真部・張溢文)

 エミールさんが、キッチンカーを始めたのは6年前。

「ブルキナファソという国を多くの日本人は知りません。『料理の名前ですか?』と聞かれたこともある。大使館の中にいては、日本の人たちが料理に触れる機会がないため始めました」

 6年間の売り上げで、ブルキナファソに学校を建てることができた。日本の学校にアフリカの文化を話しに行くこともあるという。

「あるとき小学生が僕を見かけて、『あ、ブルキナファソさんだ!』と言ったときがあって。嬉しかったですね」(エミールさん)

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美味! エルサレム料理のキッチンカー