「サザンオールスターズ 特別ライブ 2020『Keep Smilin’~皆さん、ありがとうございます!!~』」から(撮影/岸田哲平)
「サザンオールスターズ 特別ライブ 2020『Keep Smilin’~皆さん、ありがとうございます!!~』」から(撮影/岸田哲平)

■「逆境」を逆手に取る

 桑田はこれまでも人々に寄り添う活動を行ってきた。2011年の東日本大震災では、5月下旬に宮城県を訪れ、「恩返しの気持ちを込めて、東北の地に歌を届けたい」という思いと、自身の病気からの復活の場としてライブを企画。6月末まで遺体安置所になっていた総合体育館で、9月にライブを開催。収益の一部を寄付した。南谷が続ける。

「東日本大震災のときも今回のコロナ禍も、真っ先に旗を掲げて駆けつける。『東京VICTORY』で一緒に拳を突き上げていたとき、僕も含めてみんな嬉し泣きしていました。僕たちはついていくばかりですけど、全力でサポートしたいといつも思っています」

「サザンオールスターズ 特別ライブ 2020『Keep Smilin’~皆さん、ありがとうございます!!~』」から(撮影/岸田哲平)
「サザンオールスターズ 特別ライブ 2020『Keep Smilin’~皆さん、ありがとうございます!!~』」から(撮影/岸田哲平)

 全22曲、2時間10分のステージが幕を閉じた。興奮冷めやらぬ中、映像が切り替わり、エンドロールにのせて桑田のソロ曲「SMILE~晴れ渡る空のように~」が流れ始める。マスク姿でリハーサルを行うメンバー、そして今回のライブを一緒に作り上げたダンサーやスタッフたちの真剣な眼差しが映し出され、そこへ桑田の歌声が響いた。

 ライブの2日後、桑田はラジオ番組で次のように語った。

「リハーサルもライブ当日も、感染予防のためにスタッフ全員がマスクを着用。みんなのマスクにはスマイルマークが付けられていました。その光景を見たとき、今回のライブで届けたいメッセージを象徴していると思った。それは『逆境を逆手にとる』こと。ウィズコロナとはそういうことなんだと教えてもらった気がしました」

 配信チケット購入者数約18万人、推定視聴者数50万人。無観客だからこその映像を届け、日本中の人々と画面越しにつながる。これからのエンタメが進むべき方向を示す大きな道しるべとなった。ここから未来が始まる。(編集部・藤井直樹)

※AERA 2020年8月3日号