くじら食堂/東京都小金井市梶野町5-1-1 JR中央線東小金井駅ナカ/【月~土】11:00~15:00、17:00~25:00【日曜祝日】11:00~25:00/筆者撮影
くじら食堂/東京都小金井市梶野町5-1-1 JR中央線東小金井駅ナカ/【月~土】11:00~15:00、17:00~25:00【日曜祝日】11:00~25:00/筆者撮影

 JR東小金井駅の駅ビル「nonowa東小金井」内にある「くじら食堂」は、店主の下村浩介さん(42)が脱サラ後、「七彩」で修行した後にオープンした店だ。モチモチの自家製麺とスープで勝負した醤油ラーメンを中心に人気を集めている。13年に開店した後、『ラーメンWalkerグランプリ2014』で「全国新人賞部門第1位」「全国総合ランキング第3位」をダブル受賞し、一躍スターダムに躍り出た。

 北海道生まれの下村さんは18歳で上京し、アイスホッケーの国体選手として大学で活躍していた。だが、22歳で大学を中退。その後2年間はメキシコ料理店でアルバイトをする生活だった。24歳で食肉卸会社に就職し、ルート配送の仕事を始める。人が少ないこともあり、豚や牛の肉を骨から外す脱骨作業から競りでの仕入れまで幅広く担当した。勤務時間が朝6時から昼12時までだったため、仕事が終わってからは好きなラーメンを食べ歩いていたという。横浜にある競り場の近くには横浜家系ラーメンの店が多く、「たかさご家」「近藤家」「介一家」がお気に入りだった。

 だが、32歳の時、とあるミスがきっかけで仕事が続けられなくなってしまう。子どもも幼く、家も買ったばかり。すぐにでも仕事を始めなければならなかった。

 経験を生かして、食肉の卸として独立することもできたが、一度の仕入れに1500万円はかかってしまう。焼肉店を始めることも考えたが、初期投資があまりにも高かった。他の道を考えたときに浮かんだのが、大好きなラーメンだった。「有名店で1年間修業すれば独立できるだろう」と思い、下村さんは修行先を探し始めた。

 修行先として真っ先に思い浮かんだのは、当時都立家政にあった「麺や 七彩」だった。前年には業界最高権威といわれる「TRYラーメン大賞」の新人大賞を獲得し、朝6時から行列ができる大繁盛店。「七彩出身」として独立できれば、自分のお店も繁盛店になるに違いないと考え、下村さんは「七彩」を訪ね、店主の阪田さんにこう言った。

「給料はいりませんから、働かせてください」

 迫るものを感じた阪田さんは、下村さんを受け入れることにする。こうして、下村さんは「七彩」で働き始めた。

次のページ
行列に感じた”焦り”