東京・京都・北海道・東北・名古屋・大阪・九州・東京工業・一橋・神戸の10大学への合格者数の総数(19年)ランキング1~10位。トップは東京・開成高校(AERA11月4日号掲載)
東京・京都・北海道・東北・名古屋・大阪・九州・東京工業・一橋・神戸の10大学への合格者数の総数(19年)ランキング1~10位。トップは東京・開成高校(AERA11月4日号掲載

 浦和の現役進学率は「県内でも低いほう」と大山教頭。競歩や遠泳など運動にも力を入れていることもあり、中学生の保護者からは「浦和体育学校」「ほったらかし学校」などと揶揄されることもあった。

「私たちは全人教育を掲げています。決して効率の良いものではありませんが、自走できる生徒を育てたい」(大山教頭)

 その理念を貫きつつ、高2の中だるみの時期に受験準備の講座を開いたり、同校OBで作家の佐藤優さんが週1回、5人前後の生徒たちを前に読書法の特別講座を開くなど、浦和は改革を遂行。19年には、過去10年間で現役進学率が最も高い4割超え。成果が表れた。

 しのぎを削り、躍進する埼玉の高校。その余波は東京をはさんだ神奈川にも影響する。早稲田アカデミーの千葉さんは言う。

「湘南新宿ラインから始まった鉄道網の発達、さらに上野東京ラインができたことで、神奈川県から栄東など埼玉の高校に行く生徒が増えています」

 かつて「つくばエクスプレス」が開業したときも、茨城から都心部への流出が増えたと囁かれた。交通網の発展は高校の序列を大きく変える要素だ。

 そんな中、神奈川で実績を伸ばしているのが中高一貫校の聖光学院だ。卒業生数が231人ながら、東大に93人、一橋大に15人、早稲田大に208人、慶應大に141人の合格者数を叩き出した。

東京・京都・北海道・東北・名古屋・大阪・九州・東京工業・一橋・神戸の10大学への合格者数の総数(19年)ランキング21~30位。躍進する神奈川・聖光学院は東大合格者数93人を叩き出した(AERA11月4日号掲載)
東京・京都・北海道・東北・名古屋・大阪・九州・東京工業・一橋・神戸の10大学への合格者数の総数(19年)ランキング21~30位。躍進する神奈川・聖光学院は東大合格者数93人を叩き出した(AERA11月4日号掲載

「最低でも早慶だと言い切っています」

 そう話すのは、同校の工藤誠一校長だ。04年の校長就任以来、教員にはもちろん、親や生徒たちにも意識して合格実績を公言してきた。

「ご両親が気にされるのは、やはり進学先。当然のことで、だからこそ早慶を担保するし、それに見合う指導をしなければいけない」(工藤校長)

 東大合格者数が躍進したのも、工藤校長就任時に入学した中1生が卒業する10年入試だ。それまで50人を超えなかった合格者が65人になった。その後も70人前後をキープし、今年はついに93人。全国4位に躍り出た。

 教育評論家のおおたとしまささんは、同校の躍進をこう見ている。

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聖光学院が躍進した理由