半世紀後に訪れた葛西橋終点跡。旧景に写る「清水釣具商会」や砂町名物アンパンの「ナカヤ」が盛業中だった。(撮影/諸河久:2019年10月17日)
半世紀後に訪れた葛西橋終点跡。旧景に写る「清水釣具商会」や砂町名物アンパンの「ナカヤ」が盛業中だった。(撮影/諸河久:2019年10月17日)

 54年ぶりに葛西橋の終点跡を訪ねた。都電終点に代わって、都バスの「旧葛西橋」停留所が道路左側に設置されている。旧画面右側の商店街は、都電廃止後の道路拡幅でセットバックされて、すべての家屋が建て替えられていた。旧景に大きく写っている「清水釣具商会」が盛業中なのを幸いに、店主の清水晃さん(77歳)のお話を伺った。

「(都電の)終点があった時分は、都電で乗り付けた釣り客が、早朝から釣り餌を買いに来ました。釣り支度を済ませると、旧葛西橋の橋上を目指して足早に歩いてゆきましたよ」

 など、往時の思い出を懇切に語ってくれた。

 近隣の老舗「ナカヤ」の前に立つと「砂町名物アンパン」を焼く香ばしい匂いが漂ってくる。旧画面右端の「赤玉パチンコ店」は閉業し、一階では整骨院が開業していた。

 葛西橋から都電が姿を消して47年になる。古老が語る「都電に揺られてハゼ釣り詣」の終点逸話は、昭和時代の憧憬として令和の時代に語り継がれている。

■撮影:1968年1月23日

◯諸河 久(もろかわ・ひさし)
1947年生まれ。東京都出身。写真家。日本大学経済学部、東京写真専門学院(現・東京ビジュアルアーツ)卒業。鉄道雑誌のスタッフを経て「フリーカメラマンに。著書に「都電の消えた街」(大正出版)、「モノクロームの私鉄原風景」(交通新聞社)など。2019年10月に、東ドイツ時代の現役蒸気機関車作品展「ハッセルブラド紀行/東ドイツの蒸気機関車」を「KAF GALLERY」(埼玉県川口市)にて開催(14日まで)。

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諸河久

諸河久

諸河 久(もろかわ・ひさし)/1947年生まれ。東京都出身。カメラマン。日本大学経済学部、東京写真専門学院(現・東京ビジュアルアーツ)卒業。鉄道雑誌のスタッフを経てフリーカメラマンに。「諸河 久フォト・オフィス」を主宰。公益社団法人「日本写真家協会」会員、「桜門鉄遊会」代表幹事。著書に「オリエント・エクスプレス」(保育社)、「都電の消えた街」(大正出版)「モノクロームの東京都電」(イカロス出版)など。「AERA dot.」での連載のなかから筆者が厳選して1冊にまとめた書籍路面電車がみつめた50年 写真で振り返る東京風情(天夢人)が絶賛発売中。

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