評価はされたが、平日は一人でお店を回せるレベルの客足だった。大繁盛というにはまだ遠い。だが、開店から1年半経った14年夏に転機が訪れる。ミシュランガイドの担当者がお店を訪れ、見事ビブグルマンを獲得する。

 これを機にお客さんが激増し、一気に行列店の仲間入りとなった。売り上げも軌道に乗り始め、従業員も採用した。ミシュランに掲載されるのは、あっさりした清湯系のラーメン店がほとんどのなか、濃厚系の「GOTTSU」は5年連続掲載を成し遂げた。もちろんミシュランの評価が全てではないが、齋藤さんの“濃密”な魚介豚骨ラーメンはしっかりと差別化され、評価に結びついている。

ネギをねじりながら乗せる「GOTTSU」の齋藤さん(筆者撮影)
ネギをねじりながら乗せる「GOTTSU」の齋藤さん(筆者撮影)

■あっさりと濃厚で切磋琢磨

 清湯系の「四つ葉」と白湯系の「GOTTSU」は、それぞれ別の方向性のラーメンを作っているが、ラーメンへの向き合い方対しては、互いに尊敬し合っている。

「濃厚なのに美しく、大人な一杯で、魚介豚骨の最高峰だと思っています。ひとつひとつの仕事がとても丁寧で、ネギをねじりながら乗せる工程など惚れ惚れしながら見ています。細かな意識が研ぎ澄まされているんですよね。方向性が違うからこそ勉強になる部分がたくさんあります。自分も作ってみたいなと思わせる一杯ですが、とても真似できません」(四つ葉・岩本さん)

 一方、齋藤さんは岩本さんのことを「モンスター」と評す。

「あの立地であの人気を誇り、あのクオリティーのラーメンを日に600杯作るなんて、並大抵のことではありません。毎日がイベントみたいなものでしょう。向上心の塊みたいな人です。本当に憧れます」(齋藤さん)

 立地が悪くても、師匠に止められても、自分の好きなラーメンに向かって邁進していく二人。あっさりだろうが濃厚だろうが、そこに対する思いは同じなのだ。(ラーメンライター・井手隊長)

○井手隊長(いでたいちょう)/大学3年生からラーメンの食べ歩きを始めて18年。当時からノートに感想を書きため、現在はブログやSNS、ネット番組で情報を発信。イベントMCやコンテストの審査員、コメンテーターとしてメディアにも出演する。

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井手隊長(いでたいちょう)/全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。Yahoo!ニュース、東洋経済オンライン、AERA dot.など年間100本以上の記事を執筆。その他、テレビ番組出演・監修、イベントMCなどで活躍中。ミュージシャンとしてはサザンオールスターズのトリビュートバンド「井手隊長バンド」などで活動中。本の要約サービス フライヤー 執行役員、「読者が選ぶビジネス書グランプリ」事務局長も務める。

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