「魚介豚骨で独立するな」と師匠に言われても押し切った練馬のラーメン店主の挑戦 (2/4) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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「魚介豚骨で独立するな」と師匠に言われても押し切った練馬のラーメン店主の挑戦

連載「ラーメン名店クロニクル」

「GOTTSUらーめん」は一杯980円(筆者撮影)

「GOTTSUらーめん」は一杯980円(筆者撮影)

■魚介豚骨で独立はダメ! 師匠の言葉の意味

 13年3月に練馬でオープンした「RAMEN GOTTSU(ラーメン・ゴッツ)」。スッキリとした清湯(ちんたん)系のラーメンが流行する中、濃厚な魚介豚骨ラーメンで頂点を極め、5年連続でミシュランガイド東京のビブグルマンに選ばれている名店だ。そのラーメンは、巷の濃厚系とは一線を画す。

 店主の齋藤雅文さん(38)はデザイン学校を卒業後、バイク便の配送で関東を駆け回る日々を送っていた。何か楽しみを見つけたいと思い、各地のラーメンを食べるようになった。そのとき、改めて一杯のラーメンがもたらす満足感に驚き、力のある食べ物だと思ったという。

「食べたぞ! 感がすごくて、他の食べものよりも満足度が高い。ガイドブックでどんなラーメンがあるのか調べるようになりました」(齋藤さん)
店主の齋藤雅文さん(筆者撮影)

店主の齋藤雅文さん(筆者撮影)


 05~06年当時は、“魚介豚骨”が隆盛していた。「六厘舎」「つけめんTETSU」「麺徳二代目 つじ田」「中華蕎麦 とみ田」など魚介豚骨つけ麺の名店がいくつも誕生し、一大ブームを作っていった。ガッツリ系が好きだった齋藤さんも例にもれず、濃厚系のラーメンが大好きで「渡なべ」「吉村家」「勢得」などお気に入りの名店に通い詰めた。

 しばらく配送の仕事を続けていたが、このままでいいのか疑問を持ち始めていたある日、いつものように「渡なべ」を訪れると、券売機に「スタッフ募集」の文字があった。他の有名店に先駆けて02年にオープンしたこのお店は、魚介豚骨のパイオニア的存在だった。

「大好きな『渡なべ』でラーメンが作れるチャンス。料理も好きだし、やってみたい」

 すぐに電話をかけ、社員として入社することになった。09年、28歳の時だった。当時は独立しようという思いはなく、ラーメンを作ってみたいという気持ちだけだった。師匠となった渡辺樹庵さん(43)は、未経験の齋藤さんにも、丁寧に教えてくれた。齋藤さんのやる気を感じたのか、製麺のやり方やスープ作りを見せてくれるようになった。3~4カ月経った頃にはスープ作りを身につけ、何でもやらせてもらえるようになった。
渡なべの「らーめん」は一杯830円(筆者撮影)

渡なべの「らーめん」は一杯830円(筆者撮影)


「渡辺樹庵という人はやる気のない人や、言われたことだけをやる人が嫌いなんです。ミスをしたとしても、筋がしっかり通っていれば許してくれる。だから自ずと責任感が伴うんです」(齋藤さん)

 渡辺さんは天才型の職人だ。普通は何度も試作を重ねて、やっと一杯のラーメンが完成するが、彼は頭の中に完成形のレシピができている。齋藤さんが限定ラーメンのレシピを提案した時は、渡辺さんの頭の中のレシピに敵わず、何度もダメ出しを食らったという。修行から2年ぐらいしたとき、齋藤さんのなかに「自分のラーメンを作ってみたい」という思いが湧き上がる。自分なら「渡なべ」のラーメンをもっとこうする、という思いが出てきたのだという。

 独立への思いが湧き上がっていたが、ひとつ問題があった。



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