2023年3月まで東証社長、4月からJPX CEOの山道裕己氏(撮影/写真映像部・高野楓菜)
2023年3月まで東証社長、4月からJPX CEOの山道裕己氏(撮影/写真映像部・高野楓菜)

 2023年4月。東京と大阪の2大取引所を運営するJPX(日本取引所グループ)の代表に、東京証券取引所の社長だった山道裕己氏が就任した。アエラ増刊「AERA Money 2023春夏号」より山道氏のインタビューをお届けする。

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 重責を担う山道氏が取締役としてJPXに迎えられたのは2013年6月。野村證券時代に、欧州や米国の現地法人のトップ、花形の投資銀行部門専務を歴任したキャリアを買われた。

「外国人投資家の売買シェアは東証で60%ほど、先物取引に特化した大阪取引所で75%。日本の投資家はもちろん、海外へも日本株の魅力を伝える必要があります」

 海外に目を向ける山道氏の土台を作ったのは父親かもしれない。山道氏の父は、自動車のマツダで営業部長を務め、監査役にもなったエリートだ。

「父は1924(大正13)年生まれですが、英語が話せたんです。就職活動前の私に『これからは海外だ、世界を股にかけるビジネスマンになれ』と言っていました」

 山道氏は京都大学法学部卒。1976年春、大学4年生になる直前にはすでに銀行や商社の内定があった。今風に言えば「就活強者」。

 当時の就活は、人材関連会社から送られてくる分厚い企業案内集が必須アイテムだった。付録の資料請求はがきを送ると、企業側が学生にコンタクトしてくる。

「案内集の野村證券のページに『インターナショナル・フィナンシャー・ノムラ』と大書きしてありました。ノムラは国際金融を担っているってことです。今の基準では、明らかに誇大広告だと思いますが(笑)」

 野村證券の大阪支店に行ってみると、あっさり採用された。京大で体育会合気道部に所属し、部活とアルバイトに明け暮れる生活を送っていた山道氏を含めて、野村の新入社員は体育会が多かった。

「当時は人事部次長で後に社長、会長に上り詰める鈴木政志さんから『厳しい支店長とやさしい支店長のどちらがいい?』と尋ねられました。うっかり『厳しい支店長に鍛えてもらいたい』と言ったら想像以上に厳しくて。横浜駅西口支店に同期4人が配属されましたが、2年後に残ったのは僕だけ」

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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幼少期は「悪ガキでした」