中学受験者数の増加の背景には、私立校のコロナの一斉休校への対応の速さや、大学入試改革への対応力などが評価されているという
中学受験者数の増加の背景には、私立校のコロナの一斉休校への対応の速さや、大学入試改革への対応力などが評価されているという

 中学受験が活況を呈している。受験者数は前年を上回り9年連続で増加した。私立中学人気の背景にはコロナへの対応の速さや大学入試改革の影響もある。AERA 2023年5月15日号の記事を紹介する。

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 右肩上がりの中学受験者数は、今年も前年を上回り、9年連続で増加した。2023年度の首都圏の国・私立の受験者数は5万2600人(首都圏模試センター調べ)。同センター教育研究所所長の北一成さんによると、「集計を取り始めてから、過去39年間で5万2千人を超えたのは初めて」だという。数が伸びた要因として、教育関係者の多くが指摘するのがコロナ禍での、公立校・私立校の対応の差だ。学校が閉鎖になってからオンラインに切り替え素早く授業を再開した私立に比べ、公立は対応が遅れ後手に回った。一方で大学入試や教育内容など、構造的な変化もあるようだ。

「学習指導要領の変更に伴い、25年度から大学入試が変わりますが、保護者は私立の方がそれに対応できると見ている。同様に、昨今求められている思考力、表現力なども私立の方が優位と期待を寄せています」(北さん)

■安全志向から挑戦型へ

 今年は昨年の安全志向から、チャレンジする受験生が増え、最難関の開成(東京都荒川区)、桜蔭(文京区)と男女のトップ校がそれぞれ1206人から1289人、557人から629人と志願者を増やした。新校舎の影響も大きい。開成は23年6月にII期工事が竣工予定。桜蔭も天体観測ドームや化学室がある東館の建て替えが進んでいる。

「単に校舎が新しくきれいになった、だけではありません。新しくなった建物や設備で、その学校がどんな教育をしようとしているのかがわかる。そういった点も評価されたのでは」(安田教育研究所代表の安田理さん)

 21年度に「サイエンスセンター」が完成した海城(新宿区)も1860人から2020人に志願者が増加。地学実験室にはボーリング工事で採取した地層の標本を展示するなど、さまざまな工夫が凝らされている。

 桜蔭は22年の大学入試で東京大理III合格者を13人輩出。トップ常連の灘(神戸市)を抜き、女子校として初めてトップに躍り出た。今年も11人合格し、灘に次ぐ2位となり底力を見せた。

 首都圏ではここ数年共学校の人気が続いていたが、今年は男子校、女子校の受験者が増加した。特に男子校は「難関校から中堅校まで、ほとんどの学校が増加し受験生には厳しい戦いになった」(安田さん)という。

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