売り場に並ぶマスク。今も目立つ場所に置く店も多い(撮影/写真映像部・東川哲也)
売り場に並ぶマスク。今も目立つ場所に置く店も多い(撮影/写真映像部・東川哲也)

 新型コロナウイルス対策が転換点を迎えた。マスクの着用は自己判断になり、5月8日には感染症法上の分類が5類に引き下げられた。日常生活で意識すべきことはあるのか。東京都医師会会長・尾崎治夫さん、藤田医科大学教授・本田仁さん、産業医科大学産業衛生教授・宮本俊明さんに聞いた。AERA 2023年5月15日号から。

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Q:5類移行にあたり、自宅に備えておいた方がいいものを教えてください。

A:検査キットや解熱剤、飲料水、食料。パルスオキシメーターもあれば便利。

 これまで自宅療養する際には、自治体から飲食料品などの支援やパルスオキシメーターの貸与があったが、それはなくなる。

尾崎「厚労省が承認した検査キットを家族の人数×2回分、そして解熱剤。また5日間ぐらいの飲料水と食料。これは、新型コロナウイルス感染症対策に限らず、地震などの災害対策にも役立ちます」

本田「パルスオキシメーターがあると、重症化の兆候に早く気づくのに役立ちます。血中の酸素飽和度を測る機器で、数値が低くなると、自覚症状がなくても、重症化している可能性が高いです。発症直後90台後半だったのが90台前半に下がったら、医療機関を受診して下さい」

東京都医師会会長 尾崎治夫さん/医師・医学博士。専門は循環器内科。おざき内科循環器科クリニック院長。2015年から現職
東京都医師会会長 尾崎治夫さん/医師・医学博士。専門は循環器内科。おざき内科循環器科クリニック院長。2015年から現職

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Q:マスクの着用は自己判断になっています。これからもした方がいい場面は?

A:重症化リスクの高い人が地域で大流行中に人混みに行く時や、病院や福祉施設のようにハイリスクの人が多い施設、コールセンターのように会話の多い職場、自分が感染している可能性がある場合などは着用した方がいい。

 マスクは、自分の感染を防ぐ効果と、他の人への感染を防ぐ効果がある。米ワシントン大学の研究チームが20年1月1日から22年7月31日までの全米50州の感染者数と様々な感染対策の関係を分析したところ、マスクとワクチン接種は、感染率を大きく下げているとみられた。

藤田医科大学教授 本田仁さん/医師・医学博士。日米で感染症専門医の資格を持つ。感染症学や病院感染対策、抗菌薬適正使用などが専門
藤田医科大学教授 本田仁さん/医師・医学博士。日米で感染症専門医の資格を持つ。感染症学や病院感染対策、抗菌薬適正使用などが専門

本田「着用を判断する上でのカギは感染の可能性が高いかどうかです。地域の流行状況や、行く場所の混雑ぶりなどを考慮し、感染の可能性が高い場合、とくに重症化リスクの高い人はマスクを着用した方がいいでしょう。また、自分が感染している可能性がある場合や、発症してから10日間程度は、他の人にうつさないよう配慮して、マスクを着用すると、感染拡大を防げると思います。一方、こういった機会以外では、着用の意義は低いでしょう」

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