マスクの着用は有効な予防策でもある。重症化リスクが高い人が流行している地域の人混みに行くときなどは着用したい(撮影/写真映像部・東川哲也)
マスクの着用は有効な予防策でもある。重症化リスクが高い人が流行している地域の人混みに行くときなどは着用したい(撮影/写真映像部・東川哲也)

 新型コロナウイルスの感染症法上の分類が、5月8日から季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げられた。職場での感染対策は何が変わるのか、どんなことに気をつければいいのか。産業医科大学産業衛生教授・宮本俊明さんに聞いた。AERA 2023年5月15日号の記事を紹介する。

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Q:職場での感染対策はどうなりますか?

A:事業所ごと、つまり職場ごとが自主的に行う。

 今後、政府や自治体の要請による一律の感染対策はなくなる。政府は、効果と経済的な合理性や社会的な合理性、持続可能性を考慮し、事業者が自主的に感染対策を決めるよう求めている。

 マスク着用、手指消毒、換気、空気清浄機の導入、アクリルパーティション……。この3年でさまざまな感染対策が行われてきた。これから職場でどんな点に注意したらいいのか。

宮本「新型コロナウイルスは、微小なエアロゾルや飛沫などによる感染が主体で、ウイルスの付着したものを触って起こる接触感染は少ないことがわかっています。その点と、職場の環境、対策にかかる費用のバランスを考えた上で、どんな対策を取るのか決めたらいいと思います。

 たとえば、換気は効果が高いのでぜひ続けてもらいたいと思います。一方、テーブルの頻回なアルコール消毒や、食堂などでトングを使う際の手袋などは、費用対効果を考えれば、やめてもいいのではないでしょうか。もちろん、食品売り場など職種によっては顧客への配慮で続けるという判断もありえます」

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Q:感染したら、出社しない方がいい?

A:しない方がいい。これまでのような外出自粛要請はなくなるが、厚労省は、発症翌日から5日間、5日目にまだ症状がある場合は、症状が回復してから24時間は外出を控えることを推奨している。

宮本「新型コロナウイルスに限らず、発熱があるなど体調不良の時には欠勤して休養するのは労働者の当然の権利です。その上で、症状が回復して出勤する際には、発症から10日間ぐらいは他の人を感染させる量のウイルスを排出している可能性があるので、同僚や顧客に配慮し、マスクを着用して勤務するといいと思います」

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