ウィンザー城でエリザベス女王への献花を見て回るウィリアム王子夫妻とヘンリー王子夫妻。4人がそろうのはほぼ2年ぶり(2022年9月10日)(写真:AP/アフロ)
ウィンザー城でエリザベス女王への献花を見て回るウィリアム王子夫妻とヘンリー王子夫妻。4人がそろうのはほぼ2年ぶり(2022年9月10日)(写真:AP/アフロ)

 5月6日に行われる英国王チャールズ3世の戴冠式が近づいている。ヘンリー王子による暴露本に続き、国王の弟も回顧録を出す予定だという。不安要素を抱えつつ、改革を断行しようとする英王室。その現在地を読み解く。

【写真】ウェストミンスター寺院で行われたエリザベス女王の国葬

*  *  *

 ヘンリー王子(38)とメーガンさん(41)が、王室離脱をしてから約3年になる。メーガンさんの故郷カリフォルニア州に住まいを定め、そこで静かに暮らすと見られた。しかし、翌年にはアメリカの司会者オプラ・ウィンフリー氏のインタビューを受けた。王室内でアーチー王子に関する人種差別を受け、またメーガンさんはメディアから追いかけられ自死まで考えたのに、王室は冷淡で何もしてくれなかった、と訴えた。これに対しエリザベス女王は、「記憶とはあいまいなもの」と名言を吐き暗にたしなめている。

 その後も二人は、アメリカの「TIME」誌の2021年版「世界で最も影響力のある100人」に選出されて表紙を飾り、メーガンさんは多くの女性誌のインタビューをこなした。「被害者ビジネス」「王室批判ビジネス」との声には耳を貸さない。

 いよいよ雲行きが怪しくなってきたのは、大手配信サービス・Netflixと約160億円の契約をして、昨年12月にドキュメンタリー番組を公開した頃だろう。メーガンさんは「ラブストーリーを楽しんで」と胸を張ったが、彼女は王室での伝統のお辞儀(コーティシー)を大げさにやってみせ、女王への侮辱として国民の怒りを買った。メディアにしつこく追われると苦痛を訴えたシーンは、映画「ハリー・ポッター」のプレミア上映会の一場面を拝借するというお粗末さだった。

■ヘンリー王子の暴露本は、「自嘲的な言い訳ばかり」

 決定的なのは、今年1月に発売されたヘンリー王子による暴露本『SPARE(スペア)』だ。王室内でひどい扱いを受けたと「同情する声が殺到する」と期待した。しかし、ギネス世界記録に認定されるほどの売れ行きである一方、二人の人気は最低を記録するという珍現象。「兄から身体的暴力を受けた」「カミラ王妃は評判を上げようと必死な邪悪な継母」「父はテディベアを外国まで連れていく」などと家族のプライバシーを明かす。母ダイアナ元妃を12歳で亡くしたことに同情は寄せるが、かき集めたエピソードは「王子自身のふがいない自分への自嘲的な言い訳ばかり」と批判された。

著者プロフィールを見る
多賀幹子

多賀幹子

お茶の水女子大学文教育学部卒業。東京都生まれ。企業広報誌の編集長を経てジャーナリストに。女性、教育、王室などをテーマに取材。執筆活動のほか、テレビ出演、講演活動などを行う。著書に『英国女王が伝授する70歳からの品格』『親たちの暴走』など

多賀幹子の記事一覧はこちら
次のページ