4月一斉スタートが主流の日本。生活をすべて合わせようとすると無理が生じる(写真/gettyimages)
4月一斉スタートが主流の日本。生活をすべて合わせようとすると無理が生じる(写真/gettyimages)

 新年度が始まりましたね。アメリカ暮らしから日本に本帰国して受けた逆カルチャーショックのひとつが、4月という節目には思ったよりも多くの物事が刷新されるという事実でした。4月といえば入園・入学式と入社式という印象しかありませんでしたが、周りを見渡すと案外たくさんのものが4月を境に、あるいは4月スタートを目指して新しくなっています。

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 私はどこにも所属していない自営業者なのですが、それでもふだんお世話になっている会社や役所の部署名、制度、担当者などが変わることで新年度の始まりを意識します。街並みさえ様変わりします。我が家の近くには大きい大学があるのですが、新入生がやってくる3月末や4月を目指してのことなのか、新しいアパートやマンションが建つのがこの時期です。また定食屋さんやラーメン店など学生向けの飲食店も4月1日前後に新規開店するところが多く、これも節目を意識しているのかなと感じます。

 それに、テレビ番組。教育番組では、視聴者の子どもたちと同じように長年親しまれてきた出演者やキャラクターが3月で“卒業”し、4月から新しい顔ぶれがまるで転校生のように仲間入りします。テレビドラマも、ニュースやバラエティでも、4月から新番組や新コーナーが始まります。4月3日の月曜日にローカル番組を見ていたら、出演者が全員入れ替わったとのことで一列に並び、カメラに向かって自己紹介をしていました。「初めまして、〇〇県から来ました。これからよろしくお願いします!」とニュースキャスターや気象予報士さんがたが背筋を伸ばして挨拶をしている様子を見て、アメリカ人の夫は特に目を丸くしていました。アメリカにももちろん新学期はありますが(多くの州は9月頭開始、8月頭のところも)、こんなふうに何もかも“せーの”で一新する文化はありません。

 4月に物事ががらりと変わるのは、日本の足並みを揃えて学び働くシステムが理由ではないでしょうか。多くの日本人は3月に学校を卒業し、4月に新卒で仕事を始めます。4月にどっと増える新入社員を考慮して人事異動が計画され、転職活動もほぼ同時期に行われ、育休だって子どもの月齢にかかわらず4月から復帰する人が多い。日本よりアメリカで子育てをした期間のほうが今のところ長い私は、「年度途中だと保育園に入りにくいから4月生まれになるよう計画して妊娠する」という話を聞いたとき、にわかには信じられませんでした。

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大井美紗子

大井美紗子

大井美紗子(おおい・みさこ)/ライター・翻訳業。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部英米文学・英語学専攻卒業後、書籍編集者を経てフリーに。アメリカで約5年暮らし、最近、日本に帰国。娘、息子、夫と東京在住。ツイッター:@misakohi

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2月からの途中入園は難しい