ドラマ「私小説-発達障がいのボクが純愛小説家になれた理由-」で瀬戸康史は発達障害のある夫を演じる。役との向き合い方、作品のテーマである愛について語った。AERA 2023年4月10日号より紹介する。
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瀬戸康史(以下、瀬戸):愛って、とっても明るいものだと思います。欲しいし、あげたい。優しさの最上級みたいなものなんじゃないですか? 僕にとっての愛はそういうイメージです。
――愛することについて瀬戸康史さんに問いかけると、落ち着いた声でそう返ってきた。職業、愛妻家。そう公言する小説家・市川拓司によるエッセイが原作のスペシャルドラマ「私小説」が2夜連続で放送される。発達障害の夫とその妻の日常が描かれ、瀬戸さんは夫・伊佐山ジンを、相手役となる妻・優美(ゆみ)を上野樹里さんが演じた。
瀬戸:障害のある人を演じることへの不安みたいなものはなかったです。それよりも、僕はその人が持つ明るいところに興味があるというか。原作者の市川さんは、フィクションじゃないかと思うくらい純粋な愛情を持つ方。僕も愛の言葉というか、好きという思いを口にして伝えるし、行動に出すタイプなので、そこは似ているような気がします。
――ジンの特性をどう表現するか、監督や制作陣らと相談しながら作り上げた。だが、そこに難しさは感じなかったという。
瀬戸:気にしたのは、障害じゃなくて個性という認識でいるということと、特性をどのくらい表現するのかということです。発達障害といっても、静かにパニックになる人もいれば、興奮状態になる人もいる。それに、同じ人であっても自分をどこまで理解しているかによって対処法も違います。
■「運命」のような二人
市川さんも、今でこそ自分でいろいろコントロールできるけど、『私小説』を書いていたときはそうじゃなかったみたいです。人によって本当に違うし、もちろん特性が出るシーンを演じるときはスタッフたちと話し合いながら丁寧にやりました。でも、それ以外は他の役を演じるのと変わらなかったかな。
ジンと優美は出会うべくして出会った運命のような二人なんです。どっちかが一方的に支えるのではなく、平等な感じがします。優美はジンを一人の人間、一人の男性として見ている。それは障害があろうとなかろうと、一緒だと思うんですよね。そういう夫婦関係っていいなぁと思うし、自分たちもそうありたいです。