飯嶋慶子(いいじま・けいこ)/1960年、埼玉県生まれ。聖ヒルデガルト料理研究会主宰。ロンドン・スクール・オブ・アロマテラピー・ジャパンでアロマセラピストの資格を取得後、アロマセラピストとして活動。翻訳書に『聖ヒルデガルトの治療学』など(撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃)
飯嶋慶子(いいじま・けいこ)/1960年、埼玉県生まれ。聖ヒルデガルト料理研究会主宰。ロンドン・スクール・オブ・アロマテラピー・ジャパンでアロマセラピストの資格を取得後、アロマセラピストとして活動。翻訳書に『聖ヒルデガルトの治療学』など(撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃)

 AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。

 12世紀ドイツの修道女、ヒルデガルト』の教えとレシピを豊富なカラー写真で紹介する『中世修道院の食卓 聖女ヒルデガルトに学ぶ、現代に活きる薬草学とレシピ』。ハーブやスパイスを使い、季節や体調に合わせてつくるヒルデガルトの哲学は、現代生活にも役立つヒントがたくさんある。レシピはドイツ料理レストランのシェフ・野田浩資さんが日本の読者向けに考案。ヒルデガルト式断食セミナーやヨーロッパの歴史的修道院ガイドも収録。聖ヒルデガルト料理研究会主宰の飯嶋慶子さんに、同書にかける思いを聞いた。

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「中世ヨーロッパ最大の幻視者」と呼ばれる、ビンゲンのヒルデガルト。12世紀ドイツに生きたヒルデガルトはカトリック・女子修道院長であり、神学や医学、動物学、植物学、宝石学、音楽から自然療法まで、多くの本を著した。

 本書はヒルデガルトの残したレシピをその生涯や教えとともにわかりやすく紹介した、写真も美しい一冊だ。

 アロマセラピストでもある飯嶋慶子さん(62)が、偶然、ヒルデガルトの料理に出合ったのは14年前のこと。

「ドイツのボーデン湖畔にあるコンスタンツで、ヒルデガルトの教えに基づいた料理をだすレストランがあったんです。彼女の治療学では食事は重要な治療法だと考えられていたことも、そのときに初めて知りました。スペルト小麦(古代小麦)のパスタ料理など、食べると体が喜んでいるという強い感覚があり、ヒルデガルト料理の虜になりました」

 ヒルデガルトは病気予防としての食を重要視し、ハーブ、野菜、肉、魚など様々な食材の効能についても書き残している。健康に役立つ食べもの、食べるべき季節や避けるべきもの──食生活が人間の健康にいかに影響を与えるのか、中世に生きたヒルデガルトは気づいていたようだ。

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