4月1日開幕の舞台「エドモン」で、加藤シゲアキは劇作家エドモン・ロスタンを演じる。自身も作家として活躍するが、人物への共感と演劇の醍醐味について語った。AERA 2023年4月3日号から。

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──主演を務める舞台「エドモン~『シラノ・ド・ベルジュラック』を書いた男~」が4月1日に東京で開幕する。フランスの名作戯曲「シラノ・ド・ベルジュラック」の誕生秘話を描いた作品で、2016年にパリで上演されるやロングランヒットとなり、翌年にはフランス演劇界の栄誉と言われる「モリエール賞」で5冠を達成した作品だ。舞台は、1897年のパリ。加藤が演じるのは、2年も書けずにスランプに陥っている劇作家エドモン・ロスタン、その人だ。

■役柄とシンクロしすぎ

加藤シゲアキ(以下、加藤):書けない時の苦しみは理解できますし、共感する気持ちもありますが、お話をいただいたときは「ハマりすぎている」と思われることに対する照れのようなものもありました。もちろん、僕の書く作品と100年以上前のパリで書かれているものは違いますが、役柄と自分の職業がシンクロしすぎて、観る人の想像を狭めてしまわないか、と。

 ですが、ストーリーを聞いて「名作が生まれるまでのコメディー」って面白いなと感じました。不勉強ながら「シラノ・ド・ベルジュラック」の物語は知らなかったので、学んでいくこと自体も楽しめるのではないかと思いましたし、その過程が「エドモン」の物語と重なっていくのではないかと感じました。僕自身、そうしたメタ的な構造が好きなんです。

 アルフォンス・ミュシャの絵を通して知っていたサラ・ベルナールや、チェーホフといった歴史上の人物も登場しますし、「演劇」そのものについての演劇にもなっている。観る方に「事前に準備をしてきて」と言うのは負担になるなとは思いますが、この作品はシラノ・ド・ベルジュラックや時代背景について少し頭に入れておくと、より楽しめる作品ではないかと思います。

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