シリコンバレーバンクの支店。入り口の貼り紙には「25万ドル超の預金を持つ方は通話無料の番号に連絡してください」とあった=10日、米カリフォルニア州パロアルト
シリコンバレーバンクの支店。入り口の貼り紙には「25万ドル超の預金を持つ方は通話無料の番号に連絡してください」とあった=10日、米カリフォルニア州パロアルト

 銀行の破綻が相次ぐなど、欧米の金融機関で異常事態が起きている。金利が急上昇し、債券価格が急落するなか、金融不安は日本にも波及するのか。AERA 2023年4月3日号の記事を紹介する。

【図を見る】地銀の間で収益力に格差が生じている!(4枚)

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 ようやくコロナ禍を抜けて世の中が正常化しつつあったが、米欧で非常事態が発生した。米国で3月10日にシリコンバレーバンク、同12日にシグネチャーバンクが破綻(はたん)。続いて、経営不安説が流れていたクレディ・スイスの株価が急落し、欧州にも金融不安が波及した。

 詳しくは後述するが、米国の2行が行き詰まったのは、預金がいっせいに引き出される「取り付け騒ぎ」が起きたからだ。連鎖を警戒した米国の株式市場では、地銀株全般が売られた。

 特に下落が強烈だったのは、シリコンバレーバンクと同じく法人預金の比率が高いファースト・リパブリック・バンクだ。きな臭い噂が囁(ささや)かれ始めると、法人預金は脱兎のごとく流出しがちだ。こうした情勢を踏まえて、JPモルガン・チェースをはじめとする米銀大手11行が資金支援を決定。だが、信用格付けが引き下げられたこともあり、不安の火種は燻ったままだ。

 一方、クレディ・スイス株がたたき売られた背景には、筆頭株主であるサウジ・ナショナル・バンクの会長が追加出資を拒んだと報じられたことがある。事態を重く見たスイスの中央銀行はクレディ・スイスへの流動性の供給を表明。そして、スイス中銀と同国政府が交渉を支援し、スイス最大手金融グループのUBSによるクレディ・スイス買収の話がまとまった。

■利上げで損失拡大

 さらに、FRB(米連邦準備制度理事会)やECB(欧州中央銀行)、日本銀行など、米欧日の六つの中央銀行は、協調して金融市場へのドル資金供給を拡充することを決めた。金融不安の拡大に伴い、投資家の間で基軸通貨のドルを手元に確保する動きが活発化しがちだからだ。

 前回、主要中央銀行が協調してドル資金の供給が拡大されたのは、2020年3月に新型コロナの第1波が到来した局面だった。したがって主要国が足元の情勢を非常に深刻視していると受け止められよう。日本への波及も心配されるが、松野博一官房長官はこう述べる。

「日本の金融機関は総じて充実した流動性や資本を有しており、金融システムは総体として安定していると評価しています」

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大西洋平

大西洋平

出版社勤務などを経て1995年に独立し、フリーのジャーナリストとして「AERA」「週刊ダイヤモンド」、「プレジデント」、などの一般雑誌で執筆中。識者・著名人や上場企業トップのインタビューも多数手掛け、金融・経済からエレクトロニクス、メカトロニクス、IT、エンタメ、再生可能エネルギー、さらには介護まで、幅広い領域で取材活動を行っている。

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