大谷翔平は準々決勝のイタリア戦に先発し、五回途中まで投げて2失点に抑えた。投球数は71球だった
大谷翔平は準々決勝のイタリア戦に先発し、五回途中まで投げて2失点に抑えた。投球数は71球だった

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本代表(侍ジャパン)が準々決勝で快勝した。チームは準決勝・決勝の開催地・米国へ。史上最強と言われる強さの理由を探った。AERA 2023年3月27日号の記事を紹介する。

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 野球の国際大会・WBCで、侍ジャパンが盤石の強さを見せている。1次リーグで4連勝を飾ると、3月16日の準々決勝・イタリア戦も9-3で快勝。大谷翔平(エンゼルス、28)が五回途中まで5三振を奪って2失点と力投し、救援にダルビッシュ有(パドレス、36)をつぎ込む豪華リレーで逃げ切った。

 投打の中心として稼働するのが大谷だ。投打で大リーグトップクラスの成績を残し、前人未到の道を歩む。日の丸をつけた存在感は絶大だ。侍ジャパンを取材するスポーツ紙記者は言う。

「すごい選手がそろっていますが、大谷は別格です。試合を支配していると言えばいいんですかね……。大谷がいるだけで対戦相手に圧力を与えられる。試合前の打撃練習で規格外の特大アーチを連発していますが、相手チームの選手たちも釘付けになっていました。この時点で心理戦に優位に立っている。ちょっと異次元の選手ですね」

■バント安打も決める

 1次リーグでは初戦の中国戦に先発登板し、4回1安打5奪三振無失点。打撃でも2安打2打点で勢いに乗ると、4戦目のオーストラリア戦では初回に右中間の看板直撃の先制3点本塁打。WBC初アーチを放った。1次リーグ4試合で12打数6安打、打率5割、1本塁打、8打点。1次リーグB組最優秀選手(MVP)に輝いた。

 イタリア戦でも投打に輝いた。初回から「オラァ!」とうなり声を上げる気迫十分の投球で、二回には直球が自己最速にあと1キロに迫る164キロを計測。打撃でも頭脳戦で相手の裏をかいた。三回1死一塁の2打席目。遊撃手を二塁ベースの右に置く相手の極端な守備陣形を見ると、がら空きの三塁方向へセーフティーバントを試みて成功。悪送球を誘い、一塁走者の近藤健介(ソフトバンク、29)は三塁に到達した。その後に岡本和真巨人、26)の左越え3ランなどで一挙4点を先制。大谷の絶妙な判断が試合の局面を変えた。

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