AERA 2023年3月20日号より
AERA 2023年3月20日号より

 人間関係を維持するためにSNSをやることで「SNS疲れ」や「SNS依存」も増えている。一方、回転ずしチェーンなどでの迷惑行為をSNSに投稿する「客テロ」が社会問題化している。閲覧数や拡散で承認欲求を得ることは、どのような問題につながるのか。AERA 2023年3月20日号より紹介する。

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 ツイッター上には「便乗組」もいる。回転ずしチェーンの迷惑動画に関しては、「悲報」「悲劇」といった見出しを付けて拡散したツイートに、数万の「いいね」がついていた。承認欲求をくすぐるSNSの機能はさらに強化されている。ツイッターは昨年12月以降、全ユーザーのツイートの閲覧数が表示される機能を付加した。先の迷惑動画の拡散ツイートの閲覧数は数千万に上っている。

■増える「SNS疲れ」

 こうした中で増えているのが、「SNS疲れ」を起こす人たちだ。メディア事業などを展開する「Tier」が昨年11月、20~40代に実施した調査でSNS利用者の過半数が「SNS疲れ」を感じている、と回答。その原因として多かったのは「知りたくない情報まで知ってしまう」(55%)、「他人の楽しそう/キラキラした投稿を見て自分と比較してしまう」(40%)だった。

 SNSは情報を得るだけでなく、人間関係を維持するためにも使われている。それが「SNS依存」や「SNS疲れ」の背景要因の一つと指摘するのは、SNSのコミュニケーションに詳しい京都女子大学の正木大貴教授(臨床心理学)だ。

「SNSの特徴は時間や空間にとらわれずにつながれること。逆に言うと、いつも縛られてしまう。若い世代は特にそうですが、承認欲求のためというよりも身近な人に嫌われたくない、という意識からSNSから離れられなくなる人が多いように思います」

 一方で近年、研究者以外の人が使うようになった「承認欲求」という言葉には、若者特有の自己顕示的な振る舞いによって注目を浴びることを求める、「少しやっかいなもの」というニュアンスも含まれている、と正木教授は言う。

「SNSのもつ高い拡散力によって承認欲求が得やすく、可視化しやすくなりました。それが世代を問わず、私たちの『認められたい』という気持ちを刺激し、増幅しています」

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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