安藤優子(あんどう・ゆうこ)/1958年、千葉県生まれ。フジテレビ系「スーパーニュース」などのメインキャスターを歴任。著書に『自民党の女性認識』など(写真:本人提供)
安藤優子(あんどう・ゆうこ)/1958年、千葉県生まれ。フジテレビ系「スーパーニュース」などのメインキャスターを歴任。著書に『自民党の女性認識』など(写真:本人提供)

 長年、ニュースキャスターとして活躍してきた安藤優子さん。働く女性として、生きづらさを感じてきたという。安藤さんが働く女性の苦しさと生きづらさの正体を語る。AERA 2023年3月13日号の記事を紹介する。

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 私の世代は、働き続ける女性がまだ多くはありませんでした。働くとしても、求められていたのは「レディーのように振る舞い、犬のように働く」こと。表面上はにっこり笑って、けっして男性の邪魔をしないことが必須でした。実際には、水面下で男性の1千倍の速度でもがいているような状態でしたが、髪の毛を振り乱して、こんなに大変なんですよ!と主張することは良しとされていませんでした。

 テレビの世界に入ったのは大学生の時です。最初は男性司会者の横で、ひたすらうなずくアシスタント。次第に取材する立場を与えてもらうようになりましたが、若い女子だからダメ、若い女子だからできたと言われてしまう。自分がやったことを証明したくて、紛争地でもどこでも飛んでいきました。

 24時間、常にファイティングポーズを取っているような状態でしたが、一方で、おじさんたちにかわいがってもらうペットのように振る舞ったり、敵対視されないようにおじさんと同化してみたり。そうやって扉をこじ開けてきました。ずっと目に見えない生きづらさを感じていましたが、その働き方以外の選択肢がありませんでした。出産や子育ては、あまりに仕事に夢中で正直余裕がなかったですね。

 キャリアが積みあがっていくにつれて、私自身の生きづらさは軽減されました。周囲の視線が変わり、現場では仕事仲間として評価され、大切にしてもらえるようになったからです。女性であることを売り物にすることはしたくなかったことで、気が強いとか、生意気だとか言われることもありましたが、特に女性の視聴者からは身に余るほどの応援をいただいてきました。それが私の軸となりました。

 それでも時々、「ニュースの女王」などと書かれてしまう。カチンときますよ。そこに含まれる女性に対する圧倒的な差別感に愕然(がくぜん)として、時代は変わっても何も変わっていないんだな、と。生きづらさの正体を知りたくて、仕事の傍ら、上智大学大学院で12年間学びました。

AERA 2023年3月13日号より
AERA 2023年3月13日号より

 生きづらさの正体は「女性はこうあるべき」という「べき論」でカテゴライズされてきたことへの息苦しさでした。これは女性に限ったことではありません。多様な性による違いを容認しないことが、生きづらさを生んでいる。つまり、個人に対するリスペクトが欠けているのです。ひとりひとりの生き方、価値観、選択の自由を尊重することの重要性に気づかされました。

 性別に関係なく、自分のライフスタイルを大切にし、結婚しても出産しても、仕事を続けることのできる時代になりました。両立しながら果敢にキャリアに挑戦している後輩たちは頼もしいです。それは個人の自由が大切にされることで、より進むのではないかと思っています。

(構成/編集部・古田真梨子)

AERA 2023年3月13日号