ウクライナ戦争から1年、兵士はもちろん市民の命も多数失われている。戦争を止めるために、日本は何をするべきなのか。今年5月に広島で開催されるG7サミットの議長国としての役割について、石破茂元防衛相が語った。AERA 2023年2月27日号の記事を紹介する。

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 国連はこの1年の間、いったい何をしたのでしょうか。「安全保障理事会の常任理事国であるロシアが戦争の当事国だから、何もできない」というところで思考停止しているように感じます。そんな場合でないことは明らかです。

 こうしている間にも、人命はどんどん失われています。

 1956年のスエズ動乱の当事国は、常任理事国の英国とフランスでした。エジプトのナセル大統領(当時)がスエズ運河の国有化を突如宣言。運河で利益を得ていた英国が怒り、フランス、イスラエルとともにエジプトに侵攻しました。しかし、国連は停戦監視団を派遣し、終結させました。国連がきちんと機能した好事例です。今回はそんな動きが全く見えません。

 戦局の長期化により、米国内には「なぜ直接の利害関係がない国に多大な戦費を使った支援を続けるのか」という声が上がり始めています。ウクライナにとっては、非常に気の毒な展開だと思います。

 今回の戦争は100%ロシアに非があります。ロシアの主張は山ほどあるでしょうけれど、いかなる場合も力で国を併合することは許されません。

 一方で、ウクライナの完全勝利を目指しているうちは、戦闘が終わることはないでしょう。特にロシアは最終手段として核兵器を保有する国です。この恐ろしさを、我々はもっと認識しなければなりません。戦争を終わらせるために難しくなるのは、ロシアの顔の立て方です。だからこそ、国連が機能しなければならないのです。

 今、日本は安保理の非常任理事国として、5月に広島であるG7サミット(主要7カ国首脳会議)の議長国として行動を起こすべきだと考えています。

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