お風呂愛好家の小山薫堂さんが提唱する「湯道」が映画になり、2月23日に公開される。主演の生田斗真さんと脚本を担当した小山さんがお風呂をテーマに熱く語り合った。AERA 2023年2月20日号の記事を紹介する。

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―——お風呂をこよなく愛する脚本家・小山薫堂さん。長崎県の、ある銭湯を見た瞬間、ここで物語が作れるなと直感した。できた映画が「湯道」だ。亡き父が遺(のこ)した古びた銭湯を巡って反発し合う兄弟を軸にさまざまな人間模様をほっこり描く。舞台となる銭湯「まるきん温泉」は京都の松竹撮影所に造られた。

小山薫堂(以下、小山):銭湯好きからしたら理想の銭湯だと思いました。ディテールに関して僕からはまったくリクエストをしていなかったのですが、シナリオハンティングでかなりの数の銭湯に行ったので、スタッフで(舞台となる銭湯の)世界観は共有していました。実は、ロケをしようと思っていた銭湯があったんです。長崎にある映画と同じ名前の丸金温泉。すでに廃業していたんですが、昔ながらの佇(たたず)まいが良くて、ここを舞台にした映画を作りたいと思ったのが、そもそもの始まりでした。湯船が真ん中にあるところやカラン(蛇口)など、“リアル丸金温泉”のディテールが意外と入っています。

生田斗真(以下、生田):銭湯の前の道路から向かいのコインランドリー、ラーメン屋さん……と一つの街のように造られていて驚きました。ドデカいオープンセットでしたから、他の映画のスタッフやドラマのスタッフも「なんだこれ!?」という感じで見に来ていたほど。まるきん温泉は「営業すればいいのに」と思うほど、本物の銭湯そのもの。パイプがセットの外にある大きな浄水器につながっていて専用の業者が入ってくださっていたので、お湯もきちんと沸かすことができました。撮影が長引いてお湯が温(ぬる)くなってきたので「ちょっと沸かしてください」と言うと、すごくいい温度にしてくれました。

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