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――海辺の小さな弁当屋で働く元風俗嬢・ちひろと、町の人たちとの暮らしを描いたNetflix映画「ちひろさん」。マイペースでちょっと口が悪いちひろのもとには、傷や悩みを抱えた人々が集まる。孤独で自由な主人公を有村架純さんが演じた。
有村:2年くらい前にイヤイヤ期じゃないですけど、「なんでなんで期」があったんです。
今泉:わはは。
有村:自分のキャリアや肩書が型にはめられていくんじゃないかって窮屈さを感じていました。「なんでこれをしないといけないんだろう」「なんでこう言われているんだろう」って。社会に対する反骨心だったのかもしれないんですけど(笑)。
今泉:うんうん。
有村:でも、それって自分で自分の首を絞めることでもあるし、考えることにも疲れちゃって。そんなときにこの作品の話をいただいて、「あ、いま自分が感じていることだ」って演じる使命感みたいなものがわき上がってきました。
今泉:コロナ禍が始まって少しした頃ですね。
有村:自分自身も生きづらさを感じていたし、いろんな方が孤独や寂しさに敏感になっているときだったから。
今泉:原作の安田弘之さんとは、「暗さを知っている人のほうがいい」という話をしていて。有村さんにも脚本を読むタイミングで根暗と根アカの話をしたら、すぐに「そこは大丈夫です」と言ってくれましたよね。
有村:はい。「私は根アカなほうではないです……」って。
■ちょうどいい距離感で
今泉:かわいくて柔らかいイメージがあるけど、他の俳優さんには感じたことがない「わからなさ」もある気がします。そこがちひろさんっぽい。
有村:演じているときは、「ちひろさんを追いかけている」という感覚がありました。