膵臓がんの部位を、同一患者の非造影CT画像(上)と造影CT画像とで比較。造影CT検査は、アレルギーや腎障害が生じる恐れもあり、膵臓がんの大規模スクリーニングには適さない/総合南東北病院提供
膵臓がんの部位を、同一患者の非造影CT画像(上)と造影CT画像とで比較。造影CT検査は、アレルギーや腎障害が生じる恐れもあり、膵臓がんの大規模スクリーニングには適さない/総合南東北病院提供

 医療分野にも、AI技術活用の波が押し寄せている。デジタル技術を利用して診断や治療を支援するソフトウェアやデバイス「プログラム医療機器(SaMD)」が注目を集めている。医師の目視による診断に、AIを補助的に使うことで可能性が広がる。AERA 2023年2月13日号から。

【グラフ】診断・診療支援AIシステムの市場規模予測

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 難治がんの領域でも、プログラム医療機器の開発が進む。

 総合南東北病院(福島県郡山市)と富士通が昨年4月から共同開発を進めるのは、「造影剤を用いないCT画像」を使った、膵臓(すいぞう)がん診断支援AI。よりクリアに見える造影CTではなく、あえて、「非造影CT」を選んだのは、人間ドックなどで広く実施されている検査だからだ。生存率が低い膵臓がんを早期から、簡易な検査でも見つけられるような体制づくりを目標としている。

■救命できる患者増やす

 同病院に通院歴のある約620人の患者のうち、約120例には、他科や健診などで撮影した「膵臓がんが判明する前のCT画像」が残っていた。詳しく分析してみると、そのうちの8割以上に何らかの所見があった。同病院消化器センターの福島大造医師は、「これをAIで解析していけば、膵臓がんの疑いのある部位を検出するスクリーニングに応用できるだろう」と確信したという。

 そもそも膵臓がんは、ベテランの専門医でなければ早期発見が難しい領域。福島医師は、専門医でさえ、早期の膵臓がんの様相を熟知しているとは言い難いと実情を話した。

「大病院で専門医が診るのは、進行前の超早期の症例もあるが、行き着くところまで進んだ症例の方がほとんどです。専門家といえども、がんが大きくなって肝臓などに転移する前に、どんな状態で膵臓がんが発生するかを知らない人が多いんですよ」

 そんな事情から、完治を目指す手術ができる患者は、消化器内科を受診してきた段階で全体の約3割程度にとどまるという。

 福島医師は、医療の将来像をこう描く。

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