「東京オートサロン」の会場。新社長に就任する佐藤恒治氏(左)と豊田章男氏=1月13日、千葉市(photo アフロ)
「東京オートサロン」の会場。新社長に就任する佐藤恒治氏(左)と豊田章男氏=1月13日、千葉市(photo アフロ)

 トヨタ自動車が14年ぶりに社長を交代。豊田章男社長が退任し、エンジニアで執行役員の佐藤恒治氏が社長に昇格する。新生トヨタの目指す姿とは。AERA 2023年2月13日号の記事を紹介する。

【図表】豊田章男社長のあゆみ

*  *  *

 自動車業界は、「100年に1度の大変革期」にある。これからのクルマがどうなるかはまだわからない。答えを出すのは、若い世代だ。章男氏は、「クルマ屋の限界」と語ったが、その限界の突破が佐藤氏の課題といっていいだろう。ポイントの一つは、これまで組織の力が際立って強かったトヨタにおいて、どこまで「個」の力を発揮できるかだ。

豊田章男社長のあゆみ(AERA2023年2月13日号より)
豊田章男社長のあゆみ(AERA2023年2月13日号より)

■サポートする形

 佐藤氏は、EVにも積極的だ。2035年をめどに「レクサス」全車のEV化を成し遂げようとしている。そのエンジニア、開発者としての力量を、章男氏は買っている。だからこそ「白い巨塔」と揶揄される開発部門の変革も、佐藤氏に期待しているのだろう。

 章男氏は会見の席上、「私が会長となり、新社長をサポートする形が一番よいと考えた」と語った。この「サポートする形」がうまく機能するかが、バトンタッチが成功するかどうかのもう一つのポイントだ。

 世間には、代表権のある取締役会長として経営に影響力を残す章男氏のあり方に、疑問を呈する声がある。しかし、世界37万人の雇用を抱える巨艦トヨタを、いまの佐藤氏がただちにうまくコントロールできるとは思えない。

 したがって、いまの段階で、章男氏が新経営陣に口出しをしないほうが、むしろリスクがある。世間から多少の批判を受けることになろうとも、章男氏は、トヨタの総帥として、いましばらく果たすべき役割がある。その役割を果たしてこそ、「サポートする形」が機能する。

「見事な新会長になってもらわなければいけない」と、番頭を務める小林耕士氏は語っている。

 トヨタの構造改革という第1ステージを経て、章男氏は、新会長としての第2ステージに入る。近年、章男氏の言動で目立つのは、未来に向けての取り組みである。未来を強く意識して経営のグリップを握り始めたといえる。

次のページ