三の丸尚蔵館の収蔵品である「兎」などの絵が収められた画帖を見ながら笑顔で会話を交わす天皇ご一家(写真:宮内庁提供)
三の丸尚蔵館の収蔵品である「兎」などの絵が収められた画帖を見ながら笑顔で会話を交わす天皇ご一家(写真:宮内庁提供)

 皇后雅子さまは、光る素材がよく似合う。だが、最近は白を取り入れることが少なくない。国民への信頼は増している。だから服装も脱“無難”で、自分の主張をしてほしい。AERA 2023年2月6日号の記事を紹介する。

【写真】「歌会始の儀」に出席した雅子さま

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 雅子さまが59歳の誕生日に公表した文書に、「悲しみ」という言葉があった。結婚したのが29歳半にあたる日で、その時から今日で29年半になるとして、こう続けていた。「これまでの人生を思い返してみますと、29歳半までの前半にも、また、皇室に入りましてからの後半にも、本当に様々なことがあり、たくさんの喜びの時とともに、ときには悲しみの時も経ながら歩んできたことを感じます」

 切ないと思う一方で、これは雅子さまの新たな一歩かもしれないとも思った。これまでの誕生日では、ひたすら周囲への「感謝」を語り、今後の「努力」を表明していた。それが初めて「悲しみ」と述べた。国民への信頼感が増したからつらい気持ちを表明でき、そうできたのは自分への自信が増したからではないか。そんなふうに思った。

 話は少し変わるが、皇室ファッションですっかりおなじみになったのが、天皇ご一家の「リンクコーデ」だ。遠い昔の「ペアルック」ではなく、さりげなく一部を重ねるリンクコーデ。それがこのところ、進化の一途をたどっている。

皇后さまは昨年12月9日、59歳の誕生日を迎えた(写真:宮内庁提供)
皇后さまは昨年12月9日、59歳の誕生日を迎えた(写真:宮内庁提供)

■堂々たるリンクコーデ

 比較的カジュアルな日程の時など、必ずリンクコーデだ。例えば12月28日、映画「Dr.コトー診療所」チャリティー上映会では、明らかに愛子さまのピンクベージュの装いを基点としていた。雅子さまもピンク系ジャケットに黒のパンツ(共に光沢ある生地)で、雅子さまらしいスカーフをしていた。陛下は濃いピンクのネクタイ。

 静嘉堂文庫美術館(東京都千代田区)はお二人での訪問(12月16日)。雅子さまは黒のパンツに黒のインナー、シャンパンゴールドのジャケットだった。陛下は黒の上下にシャンパンゴールドのネクタイ。お二人の2色の配分がきれいに逆になっていて、洗練を感じさせる堂々たるリンクコーデだった。

1月には「歌会始の儀」に出席した(写真:代表撮影)
1月には「歌会始の儀」に出席した(写真:代表撮影)

 雅子さまは、光る素材がよく似合う。だからどんどん着てほしい。「無難」より「光」、それが雅子さまの本来だと思うから。ますます国民を信頼し、ご自分を主張していただきたい。キラキラ多めでたまに白。そんな配分を切に希望中だ。(コラムニスト・矢部万紀子

>>【前編の記事】雅子さまのセンスとは違う「白続き」が気がかり 皇后陛下のファッションを考える

AERA 2023年2月6日号より抜粋

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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