沿道からの歓声を受けて疾走する箱根駅伝5区のランナー/代表撮影
沿道からの歓声を受けて疾走する箱根駅伝5区のランナー/代表撮影

 毎年1月2、3日に開催される東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)。関東学生陸上競技連盟(関東学連)が主催する関東の「地方大会」だが、全日本大学駅伝、出雲全日本大学選抜駅伝競走(出雲駅伝)と並ぶ大学3大駅伝に数えられる。そんな箱根駅伝は来年、100回を記念し、予選会の出場権が全国に拡大される。関東勢以外の大学の躍進は見られるのか。AERA 2023年2月6日号の記事を紹介する。

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 予選会参加の門戸拡大が全国の学生たちにもろ手を挙げて歓迎されているかと言えば、必ずしもそうではない。咋年11月の中国四国学生駅伝で通算20度目の優勝を果たした広島経済大学の尾方剛監督(同大准教授)は、同大は今年の予選会に「参加しない」と明言する。

「去年6月に門戸拡大が発表された際、選手たちに希望を聞きましたが、参加しないという返答でした。私たちの最大の目標は出雲駅伝や全日本大学駅伝で、そこに照準を合わせて練習しています。その中で距離の長い箱根駅伝予選会にも対応するのは現実的ではありません」

 出雲駅伝、箱根駅伝予選会、全日本大学駅伝は比較的開催時期が近接する。今年の日程は正式発表されていないが、昨年は出雲が10月10日、箱根予選会が10月15日、全日本が11月6日だった。関東の大学の場合、出雲駅伝に出走するのはその年の箱根駅伝上位10校(予選会が免除のシード校)なので「3連戦」にならないが、地方強豪大の場合は比較的短い間隔で3大会に臨むことになる可能性がある。また、出雲駅伝は最長区間でも10.2キロだが、箱根予選会では全員がハーフマラソン(21.0975キロ)を走る。練習方法や練習量も大きく変わるという。

■1回限りで強化はムリ

 尾方監督自身、箱根に憧れ、箱根で輝き、箱根から世界へ羽ばたいたランナーだ。山梨学院大学2年だった第70回大会では10区を走り区間賞を獲得、総合優勝のゴールテープも切った。それでも、「箱根偏重」には異を唱える。

「そのときはオープンカーに乗って甲府市内をパレードまでしたんです。実業団に行ったってそんなことありえません。調子に乗っちゃうし、『勘違い』もしました。箱根の注目度は特別ですが、それに惑わされるのではなく、出場権を得ている出雲駅伝に注力しつつ中距離選手の強化も図っていきます」

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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