カナダのトルドー首相(右)、メキシコのロペスオブラドール大統領(中央)とメキシコで会談した米国のバイデン大統領/1月10日(写真:AP/アフロ)
カナダのトルドー首相(右)、メキシコのロペスオブラドール大統領(中央)とメキシコで会談した米国のバイデン大統領/1月10日(写真:AP/アフロ)

 米国の政治が荒れ模様だ。下院議長選出で共和党が分裂し、15回も投票が行われた。一方、安定感を見せていたバイデン大統領には機密文書私的保持の疑惑が生じている。AERA 2023年1月23日号より紹介する。

【写真】造反組に詰め寄るマッカーシー派を後ろから阻止するリチャード・ハドソン議員

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 ワシントンの新年は、テレビドラマさながらのドタバタを見せてくれた。念願の下院過半数を昨年の中間選挙で得た共和党だが、下院議長選出にあしかけ5日もかかり、空白状態を呼んだ。15回目の投票でやっと決着し、候補のケビン・マッカーシー院内総務が議長の小づちを握ったのは、7日の午前1時13分(米東部時間)だった。

 議長選出は、手続きとして投票はするものの、従来は議会多数派のトップ、つまり院内総務がシャンシャンで就任する。投票が10回以上に上ったのは、南北戦争前の1859年12月から3カ月にかけて44回行われた共和党のウィリアム・ペニントン議長の選出以来。まさに164年ぶりの「不祥事」だった。

■「トランプの話を聞け」

 大揺れスタートの主役は、共和党内の保守強硬派議員らだ。穏健派のマッカーシー氏が打ち出す政策が「甘い」と彼への投票を拒んだ。小さな政府の徹底を主張する彼らは、財政支出の大幅な削減などを要求した。2020年大統領選の結果を否定し続けているトランプ前大統領に同調する「フリーダム・コーカス(自由議員連盟)」のメンバーとも重なり、最終的に20人に上った。

 共和党222議席、民主党212議席という僅差(きんさ)の構成であるため、20人の造反でマッカーシー氏が得たのは202票。ハキーム・ジェフリーズ民主党院内総務が212票で、ともに過半数に届かなかった。

 議長がいなければ議会は成立せず、議事も始まらない。3日に予定されていた議員の宣誓就任も延期された。何よりも「共和党が分裂していて、国民のために働くことを放棄している」(ナンシー・ペロシ前下院議長)といった批判が高まった。票をまとめきれなかったマッカーシー氏だけでなく、共和党にとっては、面汚しの事態だ。

 マッカーシー派は、水面下で造反組の説得を続けた。造反組が求める政策や党内ルールの変更に何度も応じた。造反組に詰め寄った穏健派議員を、羽交い締めにして止めようとした議員もいた。トランプ氏は場外から造反組に「マッカーシーに投票せよ」とSNSや電話で指示を出す。トランプ氏に忠実なマージョリー・テイラー・グリーン議員が「トランプの話を聞け」とばかりにスマートフォンを振りかざして、他の議員に詰め寄った。写真を見ると、スマホの画面にはトランプ氏からの通話を意味する「DT」の文字が浮かんでいる。

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