春日台センターセンター(photo 社会福祉法人愛川舜寿会提供)
春日台センターセンター(photo 社会福祉法人愛川舜寿会提供)

「利用者たちを守るための壁が、逆に利用者たちの暮らしを外から見えにくくしてしまっていたんです。町の人にとって介護施設が『自分とは関係ない、壁の向こう側』という認識を育ててはいけない。福祉の営みを可視化し、入居者、利用者、職員が町の風景になることは、近隣にとっても意味があることではないかと感じていました」

 その後、自身の子育てをきっかけに保育に興味を持ち、障害の有無によらず通えるカミヤト凸凹保育園を19年に開園。0~18歳を対象とするカミヤト凸凹文化教室(児童発達支援+放課後等デイサービス)を併設している。

 園のコンセプトは凸(=長所)に注目し、凹(=短所)をみんなで埋め合うというもの。身体に障害を持つ子、発達に遅れがある子、外国にルーツを持つ子など、様々な子どもたちを分けずに保育を行う。

カミヤト凸凹保育園+plus/「日々のパン」による親子パン教室(左)。教室は開け放たれて半屋外の回廊とつながっている。日の当たる回廊に机を出してお昼を食べる子どもたち(photo 小暮誠)
カミヤト凸凹保育園+plus/「日々のパン」による親子パン教室(左)。教室は開け放たれて半屋外の回廊とつながっている。日の当たる回廊に机を出してお昼を食べる子どもたち(photo 小暮誠)

 取材に訪れた日は、「日々のパン」による親子パン教室が開催されていた。日々のパンは代表の吉永麻衣子さんの「パン作りを通じて、手作りの大切さやお子さんへの愛情を伝え、ゆとりが持てる家族の時間を増やしていきたい」という思いから、全国の幼稚園や保育園で無料のパン教室を開催している。

 こうして外部の人や地域の人を、「社会資源との連関」と捉えている同園。普段のお散歩の時間も、挨拶したり顔見知りの人と立ち話をしたり。保育士が意識的に地域の人に声をかける。

 パン教室が終わり給食の時間が始まると、かちゃかちゃと食器の音が鳴り響いた。

「波佐見焼の器をあえて使っています。落としたら壊れる、ということを学ぶのが大事だから」

 割れないプラスチックを使うのは、危なくない、扱いがラク、という大人の都合。そうではなく徹底した「子ども主体」で考えるのがこの園の方針だ。

■人間らしく生きる

 自然との調和も大事にしていて、床にはお寺などで使われる杉材を使用。回廊の屋根は光を透過する部分としない部分を交互に連続させ、素足で走り回る子どもたちは足裏から床の冷たさ、温かさを感じ取る。

「床暖房にしてしまったら“本当の状態”がわからないで育ってしまう。子どもたちはよく見ているし、敏感に気づきます」

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