札幌市中心部を練り歩く札幌五輪不招致デモの参加者ら/11月20日
札幌市中心部を練り歩く札幌五輪不招致デモの参加者ら/11月20日

 2030年札幌冬季五輪招致の機運を盛り上げる活動が当面休止される。21年夏の東京五輪で談合事件も発覚したためで、専門家2人が意見を交わした。AERA 2023年1月2-9日合併号の記事を紹介する。

【図】五輪のテスト大会業務をめぐる談合事件の構図はこちら

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 2021年夏の東京五輪・パラリンピックは贈収賄事件に続き、談合疑惑が表面化した。テスト大会の計画立案業務の入札において大会組織委員会と広告会社トップの電通が主導して事前に発注企業を決め、受注企業は本大会もそのまま随意契約で業務を請け負っていたとされる。東京地検と公正取引委員会が独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで調べている。

 巨額の公費が投じられた五輪の費用が不当につり上げられていた可能性もある。その中で進む30年札幌冬季五輪招致。五輪と広告会社の関係に詳しい著述家の本間龍さんと、元五輪選手でスポーツ経済学者の杉本龍勇さんが話し合った。

本間:一連の事件を見ていると、この巨大イベントは専任代理店として独占的に関わる電通や一部の人間にとって「体のいい金儲(もう)けの場」であり、贈収賄や談合が宿命的に「発生しないわけがない」存在なのだと思います。

■複数社にして相互監視

 五輪だけでなく世界陸上や世界水泳、野球のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)に至るまで、スポーツイベントは電通に頼らざるをえないという足かせをどうするか。電通は東京五輪で組織委の中に100人以上の社員を送り込んでいます。今回の談合疑惑でも、受注側の電通の社員が組織委にいれば、見積もりなど内部情報が筒抜けになるのは当たり前。むしろそうじゃなかったらおかしい。もし一連の贈収賄や談合を解決したかったら電通をいったん外し、専任ではなく複数社にして相互監視が利くようにするしかないはずですが、そう言える人がスポーツ界にいるか。スポーツ庁の室伏広治長官にしてもJOC(日本オリンピック委員会)の山下泰裕会長にしても、解体的に出直そうというスポーツ界としてのやる気は見えません。

杉本:広告に関してはネットに力がある時代へと変わりつつあり、広告売り上げトップのグーグルを始め、アップルなど「ビッグテック」が中心です。そんな中、テレビ広告で力を持つ会社に依存していること自体、ビジネスモデルとして遅れている。

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