元朝日新聞記者 稲垣えみ子
元朝日新聞記者 稲垣えみ子

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【写真】稲垣さんのご近所付き合いで飛び交う「風物詩」がこちら

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 2022年の締めくくりは、家から徒歩3分の町中華で近所の友達4人で忘年会。夫婦2人で営むごくごくフツーの店なので普段は予約なんぞしないが、念の為「忘年会するからねー」と日時を伝えておいたらフンと軽く頷いていた店主が、いざ行ったらメニューにない料理を3品用意してニコニコ待っていた。若い頃は銀座やらの大きな店でバリバリ宴会料理を作っていた店主なのである。これがもうどれも絶品で、皆で「何これ!」「食べたことない味!」とワーワー食べ、もちろんいつもの餃子も五目焼きそばもすごい勢いで食べて締めて1人3千円。その後はメンバーの一人が最近見つけたというこれまた超ご近所の店へ。廃屋みたいなアルミの扉を開けたら、美しいカウンターの向こうにネクタイ姿のバーテンダーが立っているクラシカルなバーで驚く。いわゆる隠れ家と形容されるのだろうが、実は全然隠れているつもりはないらしい店主から集客方法を相談され、皆でワーワー無責任なアイデアを出し合う。そしてラストは寒さに首を縮めながら向かいの寺へ。誰もいない夜の寺はめちゃくちゃ荘厳で、皆上機嫌でお参りして家路につく。カバンの中には土産のポッキーとミカン。

 ってことで、まあ本当に愉快な夜だったのだ。

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稲垣えみ子

稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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