ウクライナのゼレンスキー大統領は電撃訪問した米国の連邦議会で演説した/12月21日(AP/アフロ)
ウクライナのゼレンスキー大統領は電撃訪問した米国の連邦議会で演説した/12月21日(AP/アフロ)

 ロシアによるウクライナ侵攻など、世界情勢が混迷を深めているなか、2023年に動向を注視すべき人は誰なのか。三牧聖子・同志社大学大学院准教授に、注目の10人を選んでもらった。AERA 2023年1月2-9日合併号の記事を紹介する。

【三牧さんが選ぶ10人はこちら】

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 ロシアに侵攻されたウクライナのゼレンスキー大統領は、ウクライナを支援する国際世論の大きな流れを作り出してきました。今後も特に米国の世論をどこまで動かせるかが重要です。ただ、中間選挙で下院過半数を取った共和党トップが「ウクライナに白紙の小切手は切らない」と発言するなど、国際世論形成が2023年は思ったようにはできない状況も考えられます。ゼレンスキー大統領がどう状況を打開するか、注目です。

 ロシアのプーチン大統領は戦況が膠着する中、集団安全保障条約機構(CSTO)の同盟国からも距離を置かれる状況です。国際世論を読み間違えた結果、掲げた目標を達成できないどころか、「ロシアを孤立させて弱い国にした大統領」と後世に記憶される可能性も高いと思います。

 際立ったリーダーシップを見せたのがインドネシアのジョコ大統領。G7(主要7カ国)諸国はロシアを対話の場から排除する方向ですが、その先に平和はあるのか。G20サミット(主要20カ国・地域首脳会議)議長国としてロシアの参加にこだわり、自身の考えを貫きました。

 もう一人はトルコのエルドアン大統領。ウクライナがロシアを完全に降伏させるような戦争の終わりは現時点では望み得ない。消耗した両者が対話し、平和を模索する際トルコが鍵になります。NATO(北大西洋条約機構)加盟国でありながらロシアとも話せる仲で、プーチン大統領も西側諸国の動向を探る窓として無視できない。ロシアの侵略を批判しつつ制裁には加わらず、ロシアとの経済関係や対話の窓は閉ざさない。独自の国益を追求する注目の存在です。

AERA 2023年1月2ー9日合併号より
AERA 2023年1月2ー9日合併号より

 ロシアのヤン・ラチンスキー氏が代表を務める「メモリアル」は、政府の迫害で命を失った人たちを記録してきた団体で、22年にノーベル平和賞を受賞しました。ロシア最高裁から解散命令を受けており、団体の先行きは不透明ですが、ロシア国民が自発的に今回の戦争を反省し、この団体に評価を与えられるようになったとき、本当の意味での平和が実現されると思います。

 イランでは、女性が髪を覆うヒジャブを適切に着用していなかったとしてマフサ・アミニさんが拘束され死亡し、それを機に、大きな反政府デモが起きています。弾圧も苛烈ですが、欧米との対立を深めて孤立する保守強硬路線への国民の怒りは強い。一つの国の形が変わるかもしれない重要な動きです。

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