人生100年更年期こそ一度「棚卸し」を(イラスト:サヲリブラウン)
人生100年更年期こそ一度「棚卸し」を(イラスト:サヲリブラウン)

 作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。

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 あっという間に年末です。みなさん、2022年はどんな年でしたか? 私にとっては、加齢による体力低下と仕事の質と量の真剣勝負ばかりでした。本当に疲れた!

 そんななか、公益財団法人富山県女性財団にお声かけいただき、「更年期をどう乗り切るか」について話してきました。こういうのは楽しいばかりの仕事です。

 私は医者ではないので、更年期障害の治療法について述べるのは不適切。と同時に、49歳と言えば更年期の当事者。個人的な思いはあるのです。

 更年期は非常にわかりづらく定義されており、1年以上月経がこなくなってからさかのぼって1年前、つまり最後の月経を基点に、5年前と5年後までの10年を指します。

 ということは、少なくとも「まさに更年期だ!」と自覚的に定義できるのは、病院でホルモン量の検査でもしない限り、10年のうち最後の4年。

 更年期云々にかかわらず、40代後半になれば体力、集中力、気力がダウンします。そこにエストロゲン(女性ホルモン)分泌量が不安定になり心身ともにアンバランスになる時期が重なるなんて、どう考えても「うまくやる」こと自体が無理難題ですよね。

 原因はエストロゲン分泌量の減少だけでなく、仕事や家族関係などの環境、心理的な要因にもあると言われています。

 自力でホルモン分泌量を増やすのは不可能ながら、環境や心理的な負荷を軽減することは可能と言えば可能。もちろん、簡単ではありません。50年も生きていれば、環境も自分も、どこからほぐせばよいかわからない絡まりの塊です。でも、試さないのはもったいないとも思うのです。

 講演会では、人生100年ならば、半分の50歳くらいで一度、人生の棚卸しをするのが妥当と話しました。手垢の付いた言葉ですが、「普通」や「当たり前」を疑うこと、価値観のアップデートはマスト。

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ジェーン・スー

ジェーン・スー

(コラムニスト・ラジオパーソナリティ) 1973年東京生まれの日本人。 2021年に『生きるとか死ぬとか父親とか』が、テレビ東京系列で連続ドラマ化され話題に(主演:吉田羊・國村隼/脚本:井土紀州)。 2023年8月現在、毎日新聞やAERA、婦人公論などで数多くの連載を持つ。

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