【右】小説家・ライター・漫画家 品田遊さん
【右】小説家・ライター・漫画家 品田遊さん (しなだ・ゆう)/東京都生まれ。ダ・ヴィンチ・恐山の名でウェブサイト「オモコロ」を中心にライターとしても活躍。近著に『キリンに雷が落ちてどうする 少し考える日々』(朝日新聞出版)、『名称未設定ファイル』(朝日文庫)がある 【左】俳人・『あたしンち』共作者 上田信治さん(うえだ・しんじ)/1961年、大阪府生まれ。漫画家けらえいこの夫であり『あたしンち』共作者。俳人として『リボン』(邑書林)のほか、エッセイ集『成分表』(素粒社)がある(photo 本人提供)

 日常をおかしみとシニカルな視点で切り取る作風で知られるダ・ヴィンチ・恐山こと品田遊さん。漫画『あたしンち』の作者・けらえいこさんの夫であり共作者でもある俳人・上田信治さん。互いにシンパシーを抱いていた二人がジュンク堂書店池袋本店のイベントで初対談した。AERA2022年12月26日号の記事を紹介する。

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品田遊(以下、品田):直接お話しするのは初めてなのですが、私は上田さんの俳句やエッセイを拝見して、大いに影響を受けてきたというか、人間性のどこかに勝手にシンパシーを感じていたんです。

上田信治(以下、上田):もともと『あたしンち』の読者でいてくださったんですよね。うちでも、ずっと前から「ダ・ヴィンチ・恐山さん、おもしろいよね」という話を妻としていました。最新刊の『キリンに雷が落ちてどうする 少し考える日々』は、4年分の日記を再構成されたものですが、今までで一番品田さんらしい本だと思います。ヘンな言い方ですけど、品田さんの「もじもじした人間性」込みの魅力が出ている。

品田:ありがとうございます。

上田:風呂の水をためるのに栓をし忘れた日の日記。できごと自体は普通のおとぼけ失敗談なんですけど「あ~、やった~、と津波のような『わかり』が押し寄せた」と書かれていて。その体験の手ざわりと、品田さんの「生き心地」がすごく伝わります。

■自分を構成するカード

品田:私は異常にそうした失敗をすることが多いのですが、それが発覚するたびに、何か世界に説得されたような気分になるんですよね。その割に経験は次に生かされないんですが。

上田:ところで、僕は最近、人のキャラクターというものは、せいぜいカード数枚ぐらいの限られた構成要素でできているんじゃないかという仮説を持っているんです。品田さんを構成する何枚かのカードがあるとしたら、それは、なんだと思われますか?

品田:自分で取るカードと、最初から配られているカードがあるのかなと思うんです。最初のカードは引っ込み思案で人見知りの性格。2、3歳のころからです。そこを起点として自分で取ったカードとして大きいのは吉田戦車さんの漫画です。小2くらいのときに『酢屋の銀次』を親に買い与えられたんです。

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