スペイン戦で同点ゴールを決めた堂安律(photo ロイター/アフロ)
スペイン戦で同点ゴールを決めた堂安律(photo ロイター/アフロ)

 サッカーワールドカップ(W杯)の放映権料が膨らみ続けている。今後、テレビ局が放映権の購入から撤退しネットに移動すれば、有料放送中心になる可能性があるという。濱口博行・広島経済大学経営学部スポーツ経営学科教授が解説する。2022年12月26日号の記事から。

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 W杯をテレビで楽しむ。当然のように享受しているその状況に変化が起きています。今大会、日本のテレビ局で試合の放映権を購入したのはNHK、テレビ朝日、フジテレビだけ。2014年ブラジル大会まではNHKと民放が組み「ジャパンコンソーシアム」という形で一括購入していたのですが、離脱する局が出てきています。昨年のアジア最終予選では日本代表のアウェー戦中継が地上波から消え、有料の動画配信サービス「DAZN(ダゾーン)」のみになりました。

 理由は「放映権料の高騰」です。W杯の放映権料は1998年フランス大会までは非常に安く抑えられていました。販売する権利元であるFIFA(国際サッカー連盟)の当時の会長アベランジェ氏は、「サッカーを世界スポーツに」という方針の下、アフリカなど経済発展の遅れている地域の放映権料を無料にしていたほどです。

 ところが、ブラジル人のアベランジェ氏と欧州の理事たちとの間で権力闘争が起き、欧州側は「アベランジェ執行部はW杯の放映権料をあまりにも安く売っている」と激しく攻撃します。

 その結果、02年日韓大会の放映権料の総額は98年フランス大会の約100億円から1千億円へと跳ね上がり、そこから放映権料はうなぎ登りで膨らみ続けました。

 高すぎる放映権料に、若い世代のテレビ離れで経営状況が苦しいテレビ局は二の足を踏む。一方で「ABEMA」など広告収入でテレビを上回るネット業界が放映権を購入したわけです。地上波とABEMA両方が存在することでW杯に接する人の数は総じて増えたかもしれず、それ自体は悪いこととは思いません。

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