安定感の要因をこう語る。

「昨季の後半から練習が変わりました。いろいろな選手の練習を見て、練習量や質、どうやったら自分のためになる練習になるのか分かり、試合の安定感につながってきました。僕は、練習以上を試合で求めません」

 王者の信条を、そう語った。

 一方、悲願となる「世界の」表彰台に立ったのは山本草太(22)だ。15歳で4回転を跳び、ジュニア時代は宇野と共に国際大会の表彰台の常連。しかし16年に右足首を骨折し、3度の手術、拠点変更など苦節6年を経て、ファイナルへたどり着いた。

山本草太(22)男子2位の合計274.35点。SPは2位の94.86点、フリーは3位の179.49点だった
山本草太(22)男子2位の合計274.35点。SPは2位の94.86点、フリーは3位の179.49点だった

「今季は、まず自立しました。陸トレ(陸上トレーニング)も氷上練習も、自分から行動するようになったことで、どんな練習が試合につながるのか、自分の軸となる考え方が見つかってきたんです。(本番前の)練習で失敗しても、自分を強く持てるようになりました」

 その言葉通り、SP、フリー通じて5本の4回転を決めた。フリーではジャンプが決まるたびにガッツポーズを繰り出した。

「振り返ってみると、ガッツポーズやりすぎちゃった。でも、一つ一つ乗り越えたうれしさが演技中に出てしまいました」

■もう次に向かっている

 合計274.35点での銀メダルに、意外にも落ち着いた様子でこう話した。

「今回は今回で喜んだらと言われましたが、僕はもう次に向かっている。全日本選手権で、どうやったら同じような演技を出来るか、整理したいです」

 復活劇はここがゴールではない。4年後の高みを見上げた。

 3位は、米国のイリヤ・マリニン(18)だった。今季、史上初となる4回転アクセルを決めた新星は、今大会でもその大技を成功。フリーで計5本の4回転を降り、自称「4回転の神」の力量を発揮した。

「何より大切なのは自分を信じて跳ぶこと。そして練習から本番の気持ちでやってきたことが、生かされました」

 3人とも、練習の大切さを何度も語っていた。(ライター・野口美恵)

AERA 2022年12月26日号より抜粋