古田真梨子
松下洸平さんがホストを務めるAERAの対談連載「じゅうにんといろ」、6人目のゲストは俳優の木村多江さんです。木村さんのふわっとした雰囲気がスタジオに広がる中、初共演したドラマの撮影秘話を楽しそうに振り返る二人。12月26日増大号に掲載した対談の様子を紹介します。
木村 ゲストに選んでいただいて、びっくりしました（笑）。
松下 ぜひ多江さんとお話ししたいと思っていました！ 今春のフジ系「やんごとなき一族」で初共演させていただきました。実の親子役だったのですが、家に帰って、こんなきれいなお母さんいたらうれしいですよね。
木村 いえいえ。普段は家の中で髪振り乱してバタバタしてますよ（笑）。洸平くんと初めて会ったのは「やんごと」第1話の収録現場でした。自宅の門のところで土屋太鳳ちゃんを突き飛ばすシーンだったね。
松下 あの日、寒かったですよね。
木村 気温が1、2度しかない中、私は薄手のブラウス1枚でね。オンエアを観ると、目が血走って、顔も蒼白で悲壮な想いを抱えているように見えるんだけれど、あれは寒くてそうなっている（笑）。
松下 あはは（笑）。
木村 「やんごと」で初めて会うまで、洸平くんに対しては「テレビでよく見るとても素敵な人」という一般の主婦みたいな感覚しかなかったの。自分にこんな大きな子どもがいないこともあって、ぜんぜん息子の対象じゃないわけ（笑）。だから、どうやったら、この人のお母さんになれるのかな、とずっと考えていました。でも、最初からすごく目を合わせてくれたよね。私をお母さんとしてお芝居をつくっていこうという気概が伝わってきて、「この人なら大丈夫」だと思うことができました。
松下 僕も、まさに多江さんの目を見た時に「あなたの母親でいたい」という気持ちをキャッチした瞬間がありました。母屋のリビングで、家と縁を切ろうとするシーンです。父親からひどいことを言われ、もうここにはいられないと思って飛び出していく時に、振り返って母さんの顔を見た。あの家で唯一、自分のことを理解してくれる母親の顔を最後に見ておきたかったからですが、その時の多江さんの目は、母親の目でした。もうちょっと見ていたら泣いてたかもしれない。
古田真梨子
AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに３年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。２児の子育て中。
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