最新刊『エブリシング・バブルの崩壊』(集英社)、『米中覇権戦争で加速する世界秩序の再編 日本経済復活への新シナリオ』(KADOKAWA)はどちらも増刷を重ねている
最新刊『エブリシング・バブルの崩壊』(集英社)、『米中覇権戦争で加速する世界秩序の再編 日本経済復活への新シナリオ』(KADOKAWA)はどちらも増刷を重ねている

 頬を緩ませてベタ褒めする親日家だが、日本株を有望視する理由を尋ねると、エコノミストの顔に戻って説明した。

「米国株は現在バブル状態で非常に危険です。米国は超経済大国で、世界のGDP(国内総生産)の4分の1を占めていますが、米国株の時価総額は昨年、世界の約6割に達したんです。明らかに買われすぎです。米国株のバブルは必ず崩壊します」

 実際、2022年1月以降、崩壊の片鱗(へんりん)は見えている。これまで米国株は息の長い上昇を続けてきた。米国の主要企業500社を網羅するS&P500指数は、リーマン・ショック後の2009年3月の安値666ポイントから今年1月の高値4818ポイントまで約7倍超に膨れ上がった。

「米国の株高を主導してきたアルファベット(グーグル)やアップルなど、GAFAMと呼ばれるIT大手は今やグロース(成長)企業ではなく、ほぼ成熟企業です。現在の高い株価を正当化できるほどの成長余地はない。

欧米諸国とロシアの分断のように、世界経済がブロック化に向かえば、グーグルやアマゾンが事業拡大できるエリアはさらに狭まります」

 もっとも、GAFAMが衰退していくわけでもないという。

「価値と価格は同じではない、というのは経済の基本です。GAFAMの株は最高値から2割も3割も下落していますが、企業価値に比べて高すぎる株価が正常なレベルに戻っていく過程にあるのでしょう」

 EV(電気自動車)大手のテスラも同じだという。テスラの時価総額は、1ドル=140円換算で約100兆円(2022年10月10日現在、以下同)。トヨタ自動車の3倍の規模だ。しかしエミンさんは、「テスラの巨額の時価総額を正当化できるような成長性はない」とバッサリ。

「これまで競争相手がほとんどいなかったEVで、環境対応を急ぐ政府の補助金に支援されてテスラは躍進しました。それがどうですか?

 2022年だけでも、世界の自動車メーカーが投入した新型EVは20モデルを超え、競争は激化しています。テスラが自動運転で先行する一方、トヨタやベンツが力を入れていないように見えるのはレピュテーション(世間の評判)リスクを恐れているからです。

仮にトヨタの自動運転車が事故を起こせば『トヨタ車が事故を起こした』という悪評が立ち、自動運転機能がない車まで売れなくなります。

EVにせよ自動運転車にせよ、トヨタなどの従来メーカーが本気を出せば、もっといい商品が出せるはずです。テスラだけが優位性を保ち続けるのは困難でしょう」

 米国株のバブルが崩壊したら短期的には世界的な株安に見舞われそうだが、その次に何が起こるのだろう。

「米国を中心に配分されてきた投資資金の世界的な大移動が発生します。移動先の候補は中国、欧州、日本ということになりますが、中国は政治リスクも大きく、投資家は二の足を踏むでしょう。欧州はウクライナ戦争で地政学的リスクにさらされています。そこで日本株の出番です」

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FIREで経済的自由?