発達障害のある大学生の就職率は全体と比べて半数弱。本人が自身の特性を理解することと、大学のサポートも不可欠だ(撮影 写真映像部・東川哲也)
発達障害のある大学生の就職率は全体と比べて半数弱。本人が自身の特性を理解することと、大学のサポートも不可欠だ(撮影 写真映像部・東川哲也)

 各大学が発達障害学生の授業や学生生活などのサポートに取り組み始めている。だが、就職支援については、まだまだ充実しているとはいえないのが実情だ。大学卒業後も就職活動を続ける発達障害の20代男性のケースを紹介する。2022年12月19日号の記事から。

【グラフ】発達障害の学生の数は10年間でどうなった?

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 2021年には障害者差別解消法が改正され、民間事業者にも合理的配慮が義務付けられた。障害学生の支援は私立大学でも進められている。だが、すべての大学で手厚い支援が受けられるわけではない。

「大学のキャリア支援課は敷居が高く、利用できなかった」

 そう振り返るのは、昨年3月に私立大学を卒業した男性(24)だ。現在もアルバイトをしながら就職活動を続けている。

 小学生の頃にADHD(注意欠如・多動性障害)の診断を受けた男性は、コミュニケーションを取ることや周囲の状況理解が苦手な特性がある。それでも支援教室を活用しながら通常学級に通い、大学受験も乗り越え、就活にも前向きだった。

 ところが、頑張ろうと思った矢先に、新型コロナウイルスの感染が拡大。立てていた就活スケジュールが崩れてしまった。

「発達障害が関係なくても動きづらい状況ではありましたが、不安感がより強くなりました」

 と男性は打ち明ける。新型コロナで先が見通せないなか、不安感を補うために面接で「しゃべりすぎる」特性が出てしまうのではないかと懸念した。

 男性が通っていた大学にもキャリア支援課はあった。だが、その場所は学生課の一角にあり、常に複数の人が出入りする環境。他の学生や教職員に会話が聞こえるのではないかと想像したら、足が遠のいた。

 就職情報サイトで企業をリサーチしていたある日、障害者採用の存在を知る。

「でも、志望業界は障害者採用の枠が少なかったり、一般採用のなかで特性に配慮するという企業も多く、どちらを選べばいいかわからなくなりました」

 かかりつけの精神科医とも相談し、障害者手帳を取得。障害者採用と一般採用の“併用”で就活することにした。

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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