中川翔子(なかがわ・しょうこ):1985年、東京都生まれ。歌手、タレント、俳優、声優、イラストレーターとして活躍中。YouTubeチャンネル「中川翔子の『ヲ』」の登録者数は94万人を超える(写真は今年3月に行われたレコーディング時に撮影)/伊藤潤二(いとう・じゅんじ):1963年、岐阜県生まれ。代表作に『富江』シリーズなど。2022年に『死びとの恋わずらい』でアイズナー賞の最優秀アジア作品賞を2年連続受賞(写真:(c)ジェイアイ/朝日新聞出版・伊藤潤二『マニアック』製作委員会、撮影/写真映像部・東川哲也)
中川翔子(なかがわ・しょうこ):1985年、東京都生まれ。歌手、タレント、俳優、声優、イラストレーターとして活躍中。YouTubeチャンネル「中川翔子の『ヲ』」の登録者数は94万人を超える(写真は今年3月に行われたレコーディング時に撮影)/伊藤潤二(いとう・じゅんじ):1963年、岐阜県生まれ。代表作に『富江』シリーズなど。2022年に『死びとの恋わずらい』でアイズナー賞の最優秀アジア作品賞を2年連続受賞(写真:(c)ジェイアイ/朝日新聞出版・伊藤潤二『マニアック』製作委員会、撮影/写真映像部・東川哲也)

 世界的な人気を誇るホラー漫画家・伊藤潤二さん。その恐怖世界をアニメ化した「伊藤潤二『マニアック』」がNetflixで世界独占配信される。そのなかの一作「耳擦りする女」のヒロインを中川翔子さんが演じた。伊藤さんと中川さんが対談した、AERA2022年12月19日号の記事を紹介する。

*  *  *

中川翔子(以下、中川):伊藤先生の作品に参加できるなんて夢のようです! 数年前に実際にお会いすることができて、母と一緒に焼き肉に行かせていただいたり、私がBEAMSと共同プロデュースしているブランド「mmts(マミタス)」でコラボさせていただいたりしてきましたが、まさかヒロイン・山東まゆみの声を演じることができるなんて!

伊藤潤二(以下、伊藤):私も夢のようです。アフレコを拝聴していましたが、臨場感があって素晴らしかった。やはりしょこたんはプロフェッショナル、一流のエンターテイナーだなと感じ入りました。

中川:ぎえぇ、恐縮です!

伊藤:ホラー作品でのアフレコは初めてだったのですか?

中川:そうなんです。アニメーションでは年齢も性別も生き物の所属の壁すらも超えることができるので、普段はなるべく「中川翔子感」を消したいと思って演じるのですが、まゆみは早口でたくさん喋るとか、すべてに迷って決断できないとか、共感できる部分が多くて全身で演じられた!という感じです。

──「耳擦りする女」のまゆみは自分の行動を選択できない少女だ。「立てばいいの? 座るの?」「椅子に座るの? それとも床?」などあらゆることに迷いパニックを起こす。

伊藤:しょこたんにもまゆみ的な要素ってあるんですか?

中川:あります! アニソンなど得意分野には自信があるのですが、それ以外のことでは優柔不断で特にバラエティー番組では「いま話を振られたら何を答えたらいいの? なんて答えたら正解なの?」と、脳内で“一人まゆみ状態”になっています(笑)。

伊藤:私も同じです。自分に自信がないというか。私の母も同じで、一緒にいると「醤油はここに置いたらいい?」から始まって何でも私に聞いてくる。この物語はそこから発想しました。ホラーのネタにしちゃって、母には申し訳ないんですけど。

「耳擦りする女」に登場する山東まゆみは、一人では何も決められない。付添人として雇われた美津は、そんなまゆみに一日中寄り添い、耳元で指示を与える。が、良好に思えた関係がやがて悲劇を引き起こす── (c)ジェイアイ/朝日新聞出版・伊藤潤二『マニアック』製作委員会
「耳擦りする女」に登場する山東まゆみは、一人では何も決められない。付添人として雇われた美津は、そんなまゆみに一日中寄り添い、耳元で指示を与える。が、良好に思えた関係がやがて悲劇を引き起こす── (c)ジェイアイ/朝日新聞出版・伊藤潤二『マニアック』製作委員会

■きっかけはあのスター

中川:迷ってしまう感覚は占い好きな女性にも似ている気がするんです。自分がどうするべきかを人に聞きすぎて、結局どうすればいいかわからなくなってしまう。誰にでも共感できる部分があるところが深くておもしろい。ホラーって心の栄養になるものですから。今回、配信で初めて伊藤潤二ワールドを見る子どもたちにとっても、トラウマになってくれたら最高だな!と思いながら演じました。

次のページ