親子で一緒に掃除しよう、という意識はアメリカにもあったはず。これは40年前、1982年発行の絵本ですが最近こういったテーマの絵本はあまり見かけない気がします(画像/筆者提供)
親子で一緒に掃除しよう、という意識はアメリカにもあったはず。これは40年前、1982年発行の絵本ですが最近こういったテーマの絵本はあまり見かけない気がします(画像/筆者提供)

「家事とはいつでもどこでも自分の手で作り出せるベーシックインカム」のタイトルを読んで、深くうなずきました。先月の『AERA』に掲載された稲垣えみこ氏の記事です。

 記事は、家事育児をしないのが『男らしさ』という意識があるらしいが≪どう考えても百害あって一利なしのナゾの価値観である≫と、主に男女格差について指摘されたものです。確かに私の親世代はそんな意識の人が多いし、上司がそうだから早く帰宅して家事育児を手伝いたくてもできない若手男性が多いのでしょう。OECDの国際比較を見ると、無償労働時間の男女比が日本は5.5倍(女性/男性)と、OECD全体の1.9倍を超えて極端に大きいのです。

 女性の家事負担を減らすにはどうすればいいか。男性側にもっと家事時間を配分できるよう社会の構造が変わるといいのですが、すぐに変えるのが難しいからか「家事はアウトソーシング、またはデジタル化しよう!」という呼びかけを耳にします。でも、果たしてそれでいいのでしょうか。家事の外注・機械化が進んだアメリカに住んでいましたが、それで人々の生活が豊かになっていたかというとそうとは思えないのです。

 私が住んでいたのはワシントン州とアラバマ州でしたが、どんなおんぼろアパートにも食器洗浄機、乾燥機、ディスポーザーが完備されており、掃除洗濯が日本より圧倒的にラクでした。お掃除ロボットやスマートスピーカーも日本よりお手頃価格で種類豊富。料理中に「アレクサ、牛乳8オンスってミリリットルに換算するといくつ?」と尋ねてすぐ答えが返ってきたときは、未来に生きていると感動したものです。

 でも、家事の機械化はちょっとやりすぎじゃないかと感じるところまで来ています。最近は、電気のスイッチをパチッと押す機械まで出ていました。スマートスイッチではなく、物理的にスイッチを押す機械です。そんなの、ちょっと腰を浮かせてスイッチを押しに行けば済む話ではないか。もちろん、体が不自由な方々に役立つのは別の話ですが。

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大井美紗子

大井美紗子

大井美紗子(おおい・みさこ)/ライター・翻訳業。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部英米文学・英語学専攻卒業後、書籍編集者を経てフリーに。アメリカで約5年暮らし、最近、日本に帰国。娘、息子、夫と東京在住。ツイッター:@misakohi

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