大和証券フェロー(エキスパート・コース)吉田宗樹(よしだ・もとき)/1976年生まれ、兵庫県出身。東京大学工学部卒、東京大学大学院工学系研究科地球システム工学専攻修士課程修了。2005年、大和証券SMBC(現・大和証券)入社。欧州勤務を経て現職
(photo 写真映像部・東川哲也)
大和証券フェロー(エキスパート・コース)吉田宗樹(よしだ・もとき)/1976年生まれ、兵庫県出身。東京大学工学部卒、東京大学大学院工学系研究科地球システム工学専攻修士課程修了。2005年、大和証券SMBC(現・大和証券)入社。欧州勤務を経て現職 (photo 写真映像部・東川哲也)

 全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA 2022年12月5日号には大和証券 フェロー(エキスパート・コース)の吉田宗樹さんが登場した。

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 日々刻々と変動する株価や為替相場。大手証券会社には、クオンツと呼ばれる、数理分析の専門職がいる。証券会社の中でも特に高度な専門性を要する職務だ。

 デリバティブ(金融派生商品)の価値をどのように計算するべきか。この問いには、確率微分方程式や様々な数値計算手法で答えを出すことが求められる。株価や金利、為替そのものの値、相関係数などを基に、独自の数理モデルを使って評価手法やシステムを構築する。

 入社以来、デリバティブの評価モデルの開発に携わってきたが、2008年に転機が訪れた。会社は外国人を一斉に採用し、デリバティブの評価モデルを一新するプロジェクトがスタート。外国人のヘッドや主要なクオンツメンバーが新しく働き始めるロンドンのチームに加わることを命じられた。チームは6人。精鋭ぞろいの中で、日本人は1人だけだった。

「外資企業にいて世界標準で働いていた彼らとは知識の差、経験の差、実力の差が圧倒的だった。なかなか戦力になれずもどかしかった」

「当初はほとんど下働きで、ひたすら食らいついていった感じだった」と謙遜するが、新モデルへの大掛かりな移管プロジェクトをやり遂げた経験は大きかった。

 帰国後、マネージャーとして東京、ロンドン合わせて20人程度のチームを率いる。国際色豊かな顔ぶれで、拠点間のやり取りはもっぱら英語で行う。

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