東京都荒川区荒川6丁目は細い路地が迷路のように続く。区では建て替えや道幅の拡幅工事などを進めているが、住民の同意を得ることは難しいという(photo 編集部・野村昌二)
東京都荒川区荒川6丁目は細い路地が迷路のように続く。区では建て替えや道幅の拡幅工事などを進めているが、住民の同意を得ることは難しいという(photo 編集部・野村昌二)

 首都直下地震で6千人超の死者が出る。危険な地域はどこか。リスクが低いとされる地域も安心はできない。その理由は何か。2022年11月28日号の記事を紹介する。

【表】東京の危ない町、安全な町は?「首都直下地震危険度ランク」はこちら

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 狭い路地が無秩序に走り、両脇に木造住宅が所狭しと立ち並ぶ。下町風情の残る街並みだが、災害時の大きな弱点が潜む。

 東京都荒川区荒川6丁目。東京メトロ町屋駅の西側に広がるエリアだ。築60年近い木造住宅に住むという男性(60代)は、あきらめ顔で言う。

「地震で火事になったらあっという間に火が回る。お金があれば、安全なマンションに引っ越したいけどね」

 東京に大きな被害をもたらすとされるのが首都直下地震だ。都が今年5月に公表した被害想定では、都心南部でマグニチュード(M)7.3の地震が起きると、都内だけで死者は6148人、建物被害は約19万4千棟に上る。その首都直下地震で、危険なエリアが更新された。

■下町に危険地域集まる

 9月上旬、都は、地震発生時の建物倒壊や火災の危険度を地域別に評価した「地震に関する地域危険度測定調査」を公表した。1975年から原則5年おきに実施している調査で、今回で9回目。市街化区域の5192町(丁目)を対象に、同じ揺れの強さに遭遇した場合を想定して算出し「建物倒壊危険度」「火災危険度」、さらにこの二つを合算し災害時活動困難度を加味した「総合危険度」の3種類でランク付けをしている。そして、町丁目ごとの危険性の高い度合いを五つのランクに分けて相対的に評価。この数値が高いほど危険度は高くなる。

東京都「地震に関する地域危険度測定調査(第9回)」から(AERA2022年11月28日号より)
東京都「地震に関する地域危険度測定調査(第9回)」から(AERA2022年11月28日号より)

 その結果、総合危険度が最も高い「5」は85地域(1.6%)だ。

 1位が、冒頭で紹介した荒川区荒川6丁目。続いて、荒川区町屋4丁目、足立区柳原2丁目、足立区千住柳町の順。このように、都内を流れる隅田川や荒川沿いの荒川、足立、墨田、葛飾など23区東部の6区が85地域の4分の3を占めた。

 地域危険度測定調査部会で部会長を務めた、東京都立大学の中林一樹名誉教授(都市防災学)は、次のように説明する。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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