森ビル メディア企画部 河合隆平(かわい・りゅうへい)/1980年生まれ、東京都出身。多摩美術大学環境デザイン学科卒業後、住宅設計事務所を経て2009年から現職。都市模型やVRを使った都市景観の制作と開発に携わり続ける(撮影/写真映像部・高野楓菜)
森ビル メディア企画部 河合隆平(かわい・りゅうへい)/1980年生まれ、東京都出身。多摩美術大学環境デザイン学科卒業後、住宅設計事務所を経て2009年から現職。都市模型やVRを使った都市景観の制作と開発に携わり続ける(撮影/写真映像部・高野楓菜)

 全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA 2022年11月28日号には、森ビル メディア企画部の河合隆平さんが登場した。

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 大規模な都市開発では行政機関、事業者、近隣住民ら何百人もの合意形成が重要だ。東京都港区を中心に大型再開発事業を手掛ける森ビルが推進中の虎ノ門・麻布台プロジェクトでは、約300人の関係者と30年の年月を費やし、着工にたどり着いた。

 様々な立場の人に再開発の意義を理解してもらう、大きな助けとなっているのが都市模型だ。

 模型があることで、都市を俯瞰しつつ、その構成や位置関係、地形、建物のスケールなどを専門家でなくても、イメージしやすくなる。

 その上で、どのような都市を目指すのかを議論する。

 つまり、都市模型は、魅力的な街を創り上げていくためのコミュニケーションツールなのだ。

 河合さんはそのプロフェッショナルだ。千分の一の縮尺で精密に再現した東京都内の都市模型は、200平方メートルもの面積になる。

 福岡、名古屋、横浜臨海部など日本各地から依頼を受けて製作したものも合わせると、今まで総面積約600平方メートル分の模型をつくってきた。

 つくる前に、現地を入念に調査する。街を歩いて歴史からリサーチし、建物の色など細部までこだわり抜き、常に「人を驚かす模型を造る」ことを心がける。難しい依頼でも、締め切りは必ず守る。

 2009年。制作した都心の模型が、オリンピック誘致活動に使われた。

 精巧な模型を見た、国際オリンピック委員会(IOC)の関係者や一般の人々の驚きの声を聞いたときは、うれしさを覚えた。

「都市づくりの推進に貢献できていることに、大きな魅力とやりがいを感じています」

 街並みをシミュレーションできるVR(仮想現実)空間の制作でも誇張やごまかしをせず、忠実に表現することを大切にしている。

 再現性が高いほど見る人の想像力を膨らませ、より活発な議論を引き出せると考えているからだ。

 ドラマや映画の特殊撮影で手がけた都市模型が使われることも増えた。リアルさが評価される一方で、「模型っぽさを出してほしい」と言われたこともあった。

 休日は、コンテストで優勝するほどの腕前というLEGOで、ロボット創りを楽しんでいる。(ライター・米澤伸子)

AERA 2022年11月28日号