photo (c)2021 Shanghai Lian Ray Pictures Co.,Ltd. All Rights Reserved
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 中国・成都。看護師アン・ラン(チャン・ツィフォン)の両親が事故で亡くなった。疎遠だった両親には、一人っ子政策の終焉とともにもうけた6歳の息子がいた。アン・ランは親戚たちから見知らぬ弟を引き取るように迫られるが──?連載「シネマ×SDGs」の29回目は、中国で異例のメガヒットとなった話題作「シスター 夏のわかれ道」のイン・ルオシン監督に話を聞いた。

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 はじまりは脚本家ヨウ・シャオインとのブレインストーミングでした。彼女は家族の物語を描くことに長けています。そして彼女も私も一人っ子です。社会が変わっていくなかで一人っ子だった人間が、もし一人っ子でなくなったときどのような状態になるのか。どんな変化が起こるのか。そんな興味から本作が生まれました。

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 主人公アン・ランは一人っ子政策のもとに生まれ、男の子が欲しかった両親の希望に沿えなかったという思いを抱き続けてきました。医学部に進みたかったのに両親の意向で看護師になり、自立したいま、自分の夢を叶えようと医師になるために猛勉強をしている。しかし両親が突然亡くなり、幼い弟を引き取るか、自分の人生を選ぶかの選択を突きつけられます。

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 テーマについて検閲など弊害はありませんでしたが、正直、この作品がここまで中国内で受け入れられるとは想像もしていませんでした。家父長制とその影響を受けた女性をとりまく問題が世界的な課題であることはもちろん知っていました。でも私とヨウはまず、自分や自分の周囲の人たちに起こり得るストーリーを描きたかったのです。「#個人の価値は家族の価値より大切なのだろうか?」とSNSで拡散され、多くの人がこの映画について討論してくれたことはうれしい驚きでした。

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 反響によって私たちも、少し上の世代の女性にはより生きづらさがあり、人生の選択が狭められていた状況を知りました。「女性は(女である前に)、まず一人の人間である」。これがこの物語を通じて伝えたかったことです。最後のアン・ランの選択をどう捉えるかは観客に委ねたいと思っています。言いたいのは「結論は二者択一ではない」ということ。答えはいくつあってもよいのだと思います。(取材/文・中村千晶)

イン・ルオシン(監督)Yin Ruoxin/1986年、中国安徽省出身。中央戯劇学院演劇文学演出科を卒業後、多くの演劇や映画の脚本、監督を担当。2020年に「再見、少年」で長編映画デビューし、本作が監督2作目となる。25日から全国で公開 (c)2021 Shanghai Lian Ray Pictures Co.,Ltd. All Rights Reserved
イン・ルオシン(監督)Yin Ruoxin/1986年、中国安徽省出身。中央戯劇学院演劇文学演出科を卒業後、多くの演劇や映画の脚本、監督を担当。2020年に「再見、少年」で長編映画デビューし、本作が監督2作目となる。25日から全国で公開 (c)2021 Shanghai Lian Ray Pictures Co.,Ltd. All Rights Reserved

AERA 2022年11月28日号