バイデン大統領は11月14日、中国の習近平国家主席とインドネシア・バリ島で会談した。対面での会談はバイデン政権の発足以来初めて(photo ロイター/アフロ)
バイデン大統領は11月14日、中国の習近平国家主席とインドネシア・バリ島で会談した。対面での会談はバイデン政権の発足以来初めて(photo ロイター/アフロ)

 共和党優勢と予想されていた米中間選挙。ふたを開けてみれば民主党が健闘し、「赤い波(赤は共和党のシンボルカラー)」は起きなかった。だが、民主党が安泰というわけではない。2022年11月28日号の記事を紹介する。

【図表】米中間選挙の開票状況はこちら

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 24年の再出馬に意欲を見せているバイデン大統領は上院で50議席目を確保した直後、

「結果には驚いていないが、とてもうれしい。この先数年が楽しみだ」

 と余裕をのぞかせた。14日には主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)などで訪問中のインドネシア・バリ島で記者会見し、こうも語った。

「米国民は『民主主義』こそが自分たちのあり方だと改めて証明した。政治的暴力に対しては、強い拒否感が示され、米国では民意が勝つということを力強く宣言した」

 中間選挙は大統領選挙に比べて盛り上がりに欠けるものの、民主党は「民主主義を守る」と訴え、トランプ氏の独裁的なポピュリズムに真っ向から反対して戦った。バイデン氏は、フロリダ州でZ世代初の下院議員となった25歳のマクスウェル・フロスト氏(民主党)の名を挙げ、若い有権者へ感謝の言葉を贈った。バイデン氏が当選した20年選挙同様、今回も若い人の投票が増えたことが民主党を救ったためだ。

■下院でチルドレン増加

 しかし、民主党がこのまま安泰とはいえない。

 バイデン氏が大統領選挙でトランプ氏を破った20年、ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切だ)という人権運動が若い人を奮い立たせた。白人警官が黒人男性の首を押さえつけて殺害した事件がきっかけだった。

 今回の中間選挙では、トランプ氏が大統領選挙に立候補表明するのではないかという投開票日直前のニュースが若い人に危機感を抱かせた。

 つまり、2回の選挙で民主党にとっては「神風」が吹いたことになる。しかし、今後も神風が吹くかはわからない。

 また、トランプ党が「お通夜」状態に陥ったとはいえ、トランプ氏の息がかかった当選者は確実に増えている。上院には、オハイオ州選出のJ・D・バンス氏が乗り込む。投資家で16年にベストセラー『ヒルビリー・エレジー』を著した。白人貧困階級の出自であることと、トランプ氏と親しいことをアピールして当選している。

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